テクノロジー

2019.11.17 11:00

OKでもHeyでもない。「ねぇ」で勝負に出たアイリスオーヤマの音声認識テレビ


「ホームセンター」で販売? テレビそのものの実力やいかに


薄型テレビは、価格がこなれてきた液晶パネルと大画面高精細がウリの有機ELという2極がある。高価格で50型以上の大画面でないとその性能を実感しづらい有機ELとは違い、液晶は普及にともなう価格の低下と技術の進歩で今や選択肢が豊富だ。

その激戦場を見据え、アイリスオーヤマはこの1年、全国でテスト販売を行なってきたという(音声認識のない通常型)。独自の販売網と、ネット通販を主力とする同社は家電量販店ではなく、リアル店舗を“ホームセンター”に置き、販売した。なんとも「らしい」施策だ。

前出の石垣達也は「リアル店舗とネット通販で、4K対応液晶テレビ11機種をはじめとした14機種をこの1年で10万台を出荷しました」という。この数字は50型の大画面をひと月に出荷する業界の全体数に及ぶ台数*だ。同社が自信を持つのもうなずけるインパクトがある。

ホームセンターに設置されたアイリスオーヤマのテレビ売り場
テスト販売期間ではホームセンターに売り場を設置。多くの人の関心を寄せた

肝心の液晶パネルはバックライトに「直下型」LEDを採用。詳しい方はご存知だろうが、画面全体の輝度を高め、綺麗な画面を映し出す。HDRに対応するのもその恩恵だ。

残念なのは、倍速対応は現商品では行われず、次モデルへの期待に。しかし、上位型の「フロントスピーカーモデル55V型」に関しては、応答速度(映像の早い動きに対応する数値)が「6.5ms」であり、これは十分にテレビ映像を堪能できるレベルにある。

そして4K対応というのは別途チューナーが必要になること、録画機能は内蔵していないこと、Wi-Fiもそなえていないことが、今まで多機能タイプを検討してきた方々には物足りないかもしれない。

果たして、そのマイナス点が商品選択の決定要素になる家庭はどれほどあるか疑問だ。番組や映画を堪能し、ながら見で手が離せないときには音声で操作できる。シンプルにテレビを楽しむためとしてコストパフォーマンスを考えれば、この選択はアリだろう。むしろ、既存メーカーの廉価版が苦戦を強いられることになるのかもしれない。

文=坂元耕二

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