マドゥロ大統領の愚策、経済が悪化する一方のベネズエラ

ニコラス・マドゥロ大統領 / Getty Images


責められるべきはマドゥロ大統領

上述した問題点には、それぞれ特定の原因があるかもしれないが、最終的な責任は明らかにひとりの人間にある。それは、社会主義を掲げて同国を率いるニコラス・マドゥロ大統領だ。彼の悲惨な経済政策が、現在の混乱へとつながった。

ひとつめの愚策は、同国通貨ボリバルを米ドルと連動させなかったことだ。サウジアラビアをはじめとする中東の石油産出国の多くは、自国通貨とドルを連動させている。その理由は、周期的なエネルギーサイクルの波があるなかで、自国経済を安定させるのに役立つからだ。ベネズエラがドルとの連動を採用していたら、今のような困難な状況には置かれていなかった可能性もある。

それ以外の政策ミスは、ユーモラスとも言えるものだ。ベネズエラ国民が大きな苦難を強いられていなかったとすれば、ということだが。

大幅なデノミを実施

たとえば、マドゥロ大統領の愚策として有名なのが、2018年8月に実施されたデノミ(通貨単位の切り下げ)だ。通貨価値の下落に抵抗するため、通貨ボリバルのゼロを5つ削除したのだ。

つまり、通貨単位が10万分の1に切り下げられたということだ。こうしたやり方がインフレをうまく抑制できた事例は、いつの時代でも、どこの国を見ても、存在しない。効果があったと考えるのは愚かなことだ。

仮想通貨「ペトロ」を導入

マドゥロ大統領は1年あまり前に、新しい仮想通貨「ペトロ」も導入している。世界で最も有名な仮想通貨ビットコインにも欠点がいくつかあるとはいえ、ペトロに比べれば、きわめて手堅い賭けに思える。

ペトロは、ほかの仮想通貨よりも安心できる賭けの対象になるはずだった。ベネズエラの豊富な石油資源が裏付けにあるからだ。しかし、国民からでさえ関心を持ってもらえず、ペトロはこの世から忘れ去られたようだ。20年前に流行ったぬいぐるみシリーズ「Beanie Babies」と同じ末路を辿ったわけだ。

経済感覚を持った人間が代わりに政権につかない限り、マドゥロ大統領のこれまでの失策が挽回されることはなさそうだ。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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