ここ数年、紙ストローや植物由来の牛肉、自転車の利用など、気候変動の影響を相殺するために私たち個人が起こせる小さな変化が関心を集めてきた。だが、こうしたライフスタイルにおける行動の変化は、気候変動、つまり温暖化し、酸性化する大海からすれば、そこに落ちるわずかな一滴でしかない。今必要とされているのは新しい製品ではなく、政策だ。
米国のミレニアル世代には、肉を食べない人が増えている。もちろん、その一人となることは良いことだ(尊いとさえ言える)。それでも、彼らの行動がアマゾンで起きる森林火災を防ぐことにはならない。
たとえ欧米の人口の4分の1が今日からビーガン(完全菜食主義者)になったとしても、食肉の消費全体的に対する影響は、人口が急増する地域で拡大する中間層の食肉需要の伸びからすれば、取るに足りないものでしかない。
同様に、私たちはプラスチック製のストローを紙製に替え、地球にとって素晴らしいことをしていると思っているかもしれない。だが、ますます人口が増えるアジア・アフリカ地域の10の河川から海に流れ込むプラスチック廃棄物は、それらだけで世界全体の90%を占めている。
車に乗るのをやめて、自転車で通勤することはどうだろう? 米国人の大半は気候変動に関する世界的な科学的コンセンサスを受け入れている。だがその一方で、温暖化の主な原因が人間だと考える人は、およそ3分の1にとどまっている。自転車で通勤する米国人が2014 年に過去最多を記録して以降、減っているのも不思議ではない。減少の理由は、ガソリン価格の値下がりだ。
気候変動問題への対応において、地球にとって良いことは同時に、経済と私たちの生活の双方に利益をもたらすものでなければならない。米政府だけでも石油・ガスから年間1兆ドル(約108兆円)以上の恩恵を得ていることを考えれば、私たちが見つけ出す環境にやさしいバイオベースの代替エネルギーは、持続可能かつ経済成長を維持し得るものでなくてはならない。