中には、とても優秀なのに事業に失敗してしまう方もいます。これは、「前向きさ」が足りなかったという点もあるのではないでしょうか。
事業をしていれば、誰しもが壁にはぶつかります。時には、心が折れることもあるでしょう。そんな時にこそ、格好悪い自分も丸ごと受け入れて、「前向きさ」を持てるかどうかが鍵となるのです。
「天は自ら助くる者を助く」と言われるように、己を信じて己を保ち続けた人が、自身の能力を最大限に発揮することができ、目標を達成できるのでしょう。
──続いて、「素直さ」についてはいかがでしょうか?
「素直さ」は、自分の置かれている状況や能力、知識を素直に受け入れるという意味で重要です。
起業したての頃は右も左もわからないものです。そんな時に、素直に教えを乞えるかどうか。これは、スタートアップだけでなく、いつ何時でも重要ですね。
様々な人の話を聞くことで、よいところを吸収していけると思います。
自分の知らないということを正直に認め、年上でも、年下でも、お客様からでも、社員からでも、言い訳をせずに、教えを乞う。そして、素直に耳を傾ける。
まさに「聞くは一時の恥。聞かぬは一生の恥」です。
その場では、教えている方は気分がよく、教わっている方はお礼を言う立場になりますが、結果的に教えは自身の血肉になり、自分をどんどん成長させていくことができる絶好の機会のはずです。
一方で「素直さ」がない人は、こうした自分の成長の機会を逸しているわけです。だからこそ、「素直さ」を持つ人は強くなれるのだと考えています。
──では、最後に「粘り強さ」について教えてください。
弁護士ドットコムは、創業から8期連続赤字でした。事業をスタートした当初は、一見さんお断りが当たり前の弁護士業界において、弁護士がインターネットで検索され、相談者と気軽につながることへの抵抗感は大変強いものだったからです。
そんな状況を打破できたのは、「絶対に社会に役立つサービスだ」と信じて続けられた「粘り強さ」があったからです。
どんなに信じてもらえなくてもくじけることなく、一人ひとりの弁護士の先生に粘り強く弁護士ドットコムの必要性を伝えていきました。
「司法試験合格者数がこれだけ増え、時代は変わっています。困っている人がインターネット上ではこんなにいるんです。どうかお力を貸してください」と、社会的な変化と時代のニーズについて説き続けたんです。
草の根的なこうした粘りが、「こんなに一生懸命やっているのだから力になってやろう」と弁護士の先生方の心を少しずつ動かしていったのだと思います。
地動説を唱えたガリレオ・ガリレイは、多くの人が天動説を信じていた当時においては大きな反発や批判を受けましたが、それを正しいと信じ、伝え続けました。そして今ではどうでしょう? 地動説が世の中の常識になっています。
私も当時の常識では考えにくかったこのサービスが、「絶対に社会に役立つサービスになる」と考えていたので、粘り強く説明していくことができたのだと思います。