獣医師が考える「人間と動物のつながり」

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「猫の風邪は子どもにうつりませんか?」
「家族のインフルエンザが愛犬にうつらないか心配で……」

獣医師である著者は、そういった不安の声を耳にすることがよくある。ペットと人との間で、感染症をうつし合うことがないかという心配だ。

先日、このような報道があった。大分県で、フェレットを介した感染症により警察官が亡くなり、公務災害に認定されたのだ。市民の通報で、公園内に離れているフェレットの捕獲を試みる最中、受けた咬み傷から細菌感染を起こし、これが原因になったという。心よりお悔やみを申し上げたい。

診断は「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と報告されている。闘病期間は、17年近くに及んだということだ。

蜂窩織炎は、皮膚の深いところから皮下脂肪にかけて、細菌(化膿レンサ球菌や黄色ブドウ球菌などが原因である場合が多い)が感染することで起こる。感染した部位に、発赤や腫れ、痛みが生じるほか、発熱や悪寒といった全身の症状を伴うこともある。

抗菌剤の服用で治療可能なことが多く、感染した細菌が、これであっさり排除できる場合はいい。しかし細菌の性質や、患者の免疫力などの条件が重なり、一部には、重症化したり、合併症を起こすケースが見られる。血液の中に細菌が入り、傷とは別の場所に病巣を作ることや、再発を繰り返す場合もある。報じられた事故は、残念ながら後者にあたったのだと思われる。

感染源とされるフェレットは、家畜化されたイタチ科の動物で、野生には存在しない。事故の原因となった個体が、いつから野外を彷徨っていたかは分からないが、元はペットとして飼養する目的で、導入されていた可能性が高い。そう考えると、ペットから人への感染症へと、懸念が広がるところだ。

今回の報道のほかに、近年、ペットとなり得る動物との因果関係が疑われた感染症には、重症熱性血小板減少症(SFTS)などがある。

SFTSは、発熱や消化器症状、血液中の血小板が減少することで、出血しやすくなるなどの症状を伴い、時に致死的な感染症だ。人や野生動物、ペットなどに広く感染する恐れがあり、マダニが病原となるウイルスを媒介する。

ところが、SFTSの症状が見られる猫に咬まれた人が、後にSFTSを発症したことから、マダニを介することなく、動物から人へ直接感染する可能性が示唆された。しかしこれについては、いまもって明らかではない。

病原体が感染症を引き起こす動物は限定されている

これらを踏まえ、動物との接触や咬み傷、引っ掻き傷から引き起こされる感染症について、さらに動物とともに暮らすことについても、少し考えてみたい。

冒頭でも紹介した「猫の風邪は子どもにうつりませんか?」「家族のインフルエンザが愛犬にうつらないか心配で……」という不安の声に対して、「動物は強いから、めったなことでは病気をしない」というやり取りを耳にすることがある。しかし、これは正しい解釈ではない。

文=西岡真由美

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