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獣医師が考える「人間と動物のつながり」


家族ではあるが「ペットと人は違う生き物である」と認識せよ

ここまでの話題で、「動物(ペット)=人には未知のリスクを持つ存在」という不安がよぎった方もいるだろう。その感覚は、正しいと思う。と同時に、接することで、人が頻繁に感染症を患うような関係であれば、ペットとの長い歴史を築くことはできなかったはずだ。

リスクはなくならなくとも、ともにあるメリットが大きいことは、人が動物と暮らし続ける一番の理由だろう。2015年に、スウェーデンの研究者らから興味深い報告があった。幼少期から、ペットや家畜とともに過ごしてきた子どもには、ぜんそくなどアレルギーの発症が少ないというのだ。

清潔すぎる環境が、アレルギーやアトピーの発症を増やしていると指摘される現代。人とは違う生き物の微弱なアレルゲンと、幼い内から触れるメリットも生まれていると言えそうだ。

人と動物の関係は、リスクとメリットを理解した上で、適度な距離感を保つことがカギになる。この距離感とは、触った後は手を洗うだとか、ペットの口は汚い、といった漠然とした感覚に近いように思うが、案外その感覚こそが重要だったりする。

さらに近年では、予防という選択肢も増えている。上記で紹介したSFTSも猫ひっかき病も、マダニやノミが病原体を広めることから、ペットのノミ・ダニ対策が有効だ。屋内飼育が推奨される猫に関しては、リスク自体が減ってきていると言えるだろう(アウトドアなどで、直接人がマダニやノミに寄生されないことも、当然重要だ)。

しかし同時に、予防も含めたペット医療の発展と普及の背景には、人とペットの距離が近づいたことも伺える。心理的な距離の近まりが、そのまま無頓着な接し方になることは避けたい。家族の一員であると同時に、「ペットは人とは違う生き物である」という意識は、より強く持つべきだろう。

そのことが、無用な感染症のうつし合いで、ペットを悪者にしないことにつながる。さらには、人とは異なるタイムスケールで生きるペットの一生を引き受けることにも通じるのではないだろうか。

連載:獣医師が考える「人間と動物のつながり」
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文=西岡真由美

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