ビジネス

2019.11.15

米スタバの「誰でもトイレ使用可」方針と企業のジレンマ

Photo by Joe Raedle/Getty Images

スターバックスはおよそ1年半前、米国内の店舗では商品を購入しない人にも座席とトイレの使用を認めるという新たな方針を発表した。フィラデルフィアの店舗で起きた人種差別的な問題(店で待ち合わせをしていた黒人男性2人が何も注文せず席に着いていたことを理由に店側が警察に通報。男性らが逮捕された)を受けての決定だった。

だが、このほど発表された調査結果によれば、「すべての人にとっての“第3の場所”になる」という方針のために、同社は大きな代償を支払うことになっている可能性があるという。 

テキサス大学ダラス校とマサチューセッツ州にあるボストンカレッジのビジネススクールがデータ収集・解析を専門とする米セーフグラフ(SafeGraph)の協力を得て行った調査によると、新たな方針を採用した昨年5月以降、スタバの店舗の月間来客数は、それぞれの近隣にあるほかのコーヒーショップやレストランと比べて6.8%減少していたことが分かった。

セーフグラフは2017年1月~2018年10月に1000万台以上の携帯端末から収集・匿名化した位置情報を分析。データにはスタバの店舗およそ1万800軒と、周辺のその他のカフェなどの来客数が含まれている。

調査結果をまとめた報告書は、「スタバの来客数の減少幅は大きく、重大な意味がある」と指摘。一方、同社の広報担当者の責任者は、「調査は携帯電話ユーザーの位置情報データに基づいたもの。だが、私たちは実際の顧客をみている」として、結果に異議を唱えている。

業績は好調だが──

スタバが10月末に発表した2019年度(9月29日まで)の決算結果では、米国の既存店の売上高は前年比5%増、客単価は同3%増だった。また、第4四半期(同日まで)の既存店売上高は同6%増加しており、およそ3年ぶりの高い伸び率を記録した。同社のケビン・ジョンソン最高経営責任者(CEO)は、客足は営業時間中の「すべての時間帯において」伸び続けていると説明している。

だが、報告書によると、スタバが新たな方針を決定した後、ホームレスの一時宿泊施設(シェルター)に最も近い店舗と最も遠い店舗では、来客数の減少率に2倍近い差が出ている。さらに、スタバの店舗周辺では、路上での排尿が確認される件数が減少しているという。
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編集=木内涼子

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