そんな今、シボレーはなぜ60年代を思い出させるようなEVホットロッドを手がけたのか。その理由は、排気ガスをいっぱい放出するV8エンジン搭載スペックにしなくても、速くて楽しいホットロッドが作れることを証明したかったからだ。
というのも、アメリカにはホットロッド好きが大勢いる。そんな層に、レトロなルックスでありながら新時代のクリーンなEVモーターで走行するクルマを提案し、新しいホットロッド層を築きあげようとしているのだ。このシボレーの考えは立派だと思う。
アメリカのエンスーたちが描く理想的な世界には、昔からクルマ文化になくてはならない「サウンド、スピード、スメル」という「3S」がしぶとく存在する。シボレーはE-10コンセプトを通して、その3Sを懐かしむ大勢のニーズに応えるようにしている。
ガソリン・エンジンやそのエキゾーストの匂いは消えても、クルマから力強くて渋い音を聞いていたいユーザーがまだたくさんいる。それに、このEVはかなりパワフルなので、後輪をスピンさせてスモークやその匂いを楽に出すこともできる。「バーンアウト」というけれど、これも3Sの一つだ。
60年代の美しいレトロなルックスを尊重しながらも、クリーンで圧倒的に速いレスポンスを見せるE-10のようなトラックの需要は、けっこうあるような気がする。
国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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