村上隆がストリートカルチャーの祭典に注力する理由


インスタグラムもアートの世界に革命を起こしました。僕が代表を務める「カイカイキキ」に所属しているアーティストMADSAKIとも、インスタグラムを通して出会いました。

彼の作品をインスタグラムで作品を見て、これはいいと思った。だから、ダイレクトメッセージを送ったんです。

こんな出会いから、かれこれ4年の付き合いとなり、これまでに何度も彼の個展を開催してきました。

インスタグラムで見つけたアーティストの70%は、実力や将来性のあるアーティストでした。70%って、結構すごい確率だと思うんですよね。

だから、インスタグラムを通じてレベルの高いアーティストを発掘することは可能です。そして、アーティストにとっても絶好のプロモーションの場にもなっています。

これからソーシャルメディアがどのような道を歩むか、どう人々のコミュニケーションを変えるか確かなことはわかりませんが、これまで僕は、インスタグラムを通じてオーディエンス、アーティスト、そしてマーケットといい関係性を築くことができたと思っています。

それではここで、MADSAKIにも登壇してもらおうと思います。15分前にオファーをしたから、何を話してもらうか決めてはいないのですが、とにかくどうぞ。

彼と英語でコミュニケーションをとるのは、僕がインスタグラムで彼を見つけてきた時以来かもしれませんね。

MADSAKIとは、2016年横浜美術館で開催した「村上隆のスーパーフラット・コレクション —蕭白、魯山人からキーファーまで—」で初めて直接会いました。

そこに、うるさくて、大きな声で笑う男がいたんです。嫌いなタイプだなと思っていたのが、MADSAKIです。

MADSAKI : 僕からも、2015年に村上さんと出会った時の話をしてもいいでしょうか?当時、僕はめちゃくちゃ貧乏だったんです。

そろそろアーティストをやめて、会社員になった方がいいかと真剣に考えていた頃でした。そんなときに、朝9時に起きてインスタグラムを見たら、一人フォロワーが増えていたんです。

それで、誰にフォローされたのかを確認したら村上さんだった。最初は偽者だと思っていたんだけど、どうも本物らしいぞ、と。

その数日後に、僕の絵が欲しいとメッセージをもらったんです。その時は、村上さんが冗談を言っているのかと思った。

「え、本気ですか?」と聞いたら、「もちろん」と。それで僕の作品を買ってくれたんです。

村上:ちょっと違うかな。最初から僕は安くしてくれ、と結構なディスカウントをお願いした。

MADSAKI :そうでした。当時、すごく貧しかったけど、安く作品を売りました(笑)。そうして買ってくれた僕の作品を、横浜美術館の作品展で展示してくれたんです。

招待はされていませんでしたが、自主的にその場に行ったんです。そこで初めて直接村上さんに会った。「どうも」って挨拶をしに行ったのですが、村上さんは「話しかけてるな」という顔をしてましたね。これが、僕たちが直接会った時のことです。
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取材協力=ComplexCon 写真=Jennifer Johnson 翻訳・構成=守屋美佳

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