キャリア・教育

2019.11.21 10:00

大学生がターゲット。「モノなしマルチ」の実態とは?

 Antonio Guillem / Shutterstock.com

今回は最近大学生を中心に被害が広まっている詐欺について書きたい。いまはまだ子どもが小さかったとしても、大学生になるとこのように詐欺に遭う危険性があると理解していただき、子どもとの日々の会話のきっかけにしてもらえればと思う。

よく考えられた詐欺の手法

このところ、大学生や大学教授と話をしていてやたらと耳にするのが「モノなしマルチ」という言葉だ。「モノなしマルチ」とは、これまでのマルチ商法のように化粧品や健康食品など、実際に「モノ」を購入させるわけではなく、目に見えない暗号資産(通貨)や投資の儲け話を提供することで、お金を払わせる形式の商法である。


(出所):独立行政法人国民生活センターが2019年7月25日に発表したデータを基に株式会社マネネが作成。

上図は国民生活センターが発表している全国消費生活情報ネットワークシステムに蓄積された商品生活に関する相談情報のデータだ。ここ数年で「役務」の相談件数が増えているが、まさにこれが「モノなしマルチ」に該当する部分だ。
 
よくあるパターンとしては、まず「儲かる話があるから、一度会わないか?」と比較的長い付き合いの友人から声を掛けられる。初対面や知人程度ではなく、昔からの友人が声を掛けてくるのがポイントで、最初から警戒心を持たせない工夫がされる。

そして、実際に会いに行くと、他の人もいて「〇〇に投資をすれば仮想通貨で配当がもらえる。すぐに元を取れるから、借金をしてでも投資をしておいた方がいい」と説明される。学生ローンなどを使って、学生でもある程度の金額を借りられるように圧力をかけられることもあるという。
 
同じように大学生をターゲットにした「USBメモリを買わせる詐欺」もある。これは実際にUSBメモリを買わせるやり口だが、その中には「成功した投資家の投資手法」という名目で株価や為替のチャートに売買のタイミングが記された画像データが入っていたり、「日経先物で必ず勝てるシステム」や「バイナリーオプションで必ず勝てるシステム」が入っていて、購入を迫られるらしい。こちらは50万円前後が相場と言われる。
 
杜撰なケースだと売買契約は口頭で進められるが、手の込んだケースだとしっかりと注意事項などが書かれた契約書が用意される。また、勧誘側の対応もかなりマニュアル化されており、それなりの想定問答集もあるために、一度話を聞いてしまうと断るのが難しい状況に陥ってしまうという。

また、これらの詐欺話の手法にはねずみ講のモデルも組み込まれており、購入者たちは他の人に同じように売ると5万円がもらえるということで、実際に投資で儲けられなくても、10人に紹介して買わせれば元本は回収できるという仕組みの存在がさらにおいしいポイントとしてアピールされる。
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文=森永康平

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