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2019.11.13

二酸化炭素をウォッカに変える 気候変動と闘うスタートアップ

イメージ画像(Sergei Bachlakov / Shutterstock.com)

ウォッカは、よりインテリ向きの蒸留酒であるバーボンやコニャックのような高い社会的地位を持たないことが多い。それよりも、男子学生のパーティーや二日酔いなどのイメージが強いだろう。

新たなスタートアップのエアー・コー(Air Co.)は現在、ニューヨーク市ブルックリン区に持続可能性を追求した新たな蒸留所を構え、ウォッカの価値向上に取り組んでいる。同社が製造しているのは普通のウォッカではない。

同社では、発酵の代わりに特許取得済みの技術を使い、排出された二酸化炭素を飲用エタノールに変換する。そうして、1本につき大気から約450グラムの二酸化炭素を除去できるプレミアムウォッカが出来上がる。

「私たちが作るエタノールで一次産品市場を目指すよりも、純度が高いエタノールが最も高く売れる販売価格から価値提供を検討した」と語るのは、同社共同創業者のグレゴリー・コンスタンティン最高経営責任者(CEO)とスタフォード・シーハン最高技術責任者(CTO)だ。2人は「偶然にも、そのプレミアがつくのが人工的なウォッカだ」と続けた。

エアー・コーは先日、2年に及ぶ研究開発の末に最初の消費者向け製品を発表。同社は今後、香水やエタノールを基盤としたその他の消費者向け製品への拡大を予定している。同社はこのウォッカが、現在手に入るウォッカの中で最も純度が高いものだと主張している。それは同社の生産プロセスによるものだ。

2人の共同創業者の出会い


コンスタンティンとシーハンとの会談は、まるで現実世界の一風変わったカップルと話しているかのようだ。コンスタンティンは以前、英酒類大手ディアジオの商品スミノフの音楽・文化マーケティングを率いていたことがあり、うねりのある髪をたたえた新時代のウォッカ企業創業者という感じだ。

一方、長年研究室で働き、エール大学で化学物理学の博士号を取得したシーハンは、厚いレンズの眼鏡をかけ、人工光合成や二酸化炭素の変換について話すことに心地良さを感じるようだ。しかし、この2人の組み合わせはどういうわけかうまく機能している。

2人が会ったのは2017年、フォーブス「30 UNDER 30」のマーケティング・広告部門とエネルギー部門でそれぞれがランキング入りを果たした際のサミットだ。やりがいを原動力とした会社を作りたいという共通の希望を通し、コンスタンティンとシーハンは絆を結んだ。

シーハンは当時、エール大学での研究に端を発する企業、パイプカタリック・イノベーションズ(Catalytic Innovations)のCEOを務めていた。同社はその少し前に、石油送油管のためのさび止めコーティングの販売に転向していた。
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翻訳・編集=出田静

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