自分のこと、日本のことを知るために「アウェイ」を増やそう

16年ぶりにプライベートで海外旅行へ出かけた筆者。“アウェイ”で刺激を得てくるためである。何のために働くのか━━。自分のこと、日本のことをもっと知るためにも旅に出よ、と筆者は説く。


いま、フランクフルトでこの連載を書いており、明日帰国の途につく。

今回はプライベートでの旅行である。プライベートで長期の海外旅行をしたのはレオス・キャピタルワークスを創業してから1回もないので、少なくとも16年間はしていなかったことになる。

理由は、起業で忙しすぎた、それから一度会社が破綻しかけて金がなくなった、そして忙しくなって旅行どころではなくなったからだ。もちろん海外との仕事は常にあったので、出張する機会はこの間何度もあった。しかし、個人で海外旅行をするには金と時間がないとなかなか難しい。さらに、海外へ行くには国内旅行よりも体力がいる。時間と金と体力、そのすべての条件をそろえるのはなかなか難しい。

学生時代は時間と体力はあるものの、金がない。社会人になって金が貯まっても、今度は時間が取れない。そして歳を取ってくると、金と時間はあっても体力がなくなってくるという問題がある。時間と金と体力という3つの課題は、常に人生につきまとってくる。

時間と金と体力。この3つは違った要素のように見えるが、よく考えてみると、ある要素がとりわけ重要になる。それは「時間」である。

お金を稼ぐために重要な資源は何かというと、才能や、それまでに獲得した知識や経験、それに労働時間や投資期間などである。どれもが時間に紐付いている。もちろんそれを短縮することはできるが、時間をまったくかけずに得るのは難しい。

体力もそうだ。体力はおおむね20〜30代がピークであとは落ちていく一方だ。それを日々の鍛錬で緩やかにできたりはするが、体力というのは時間と逆相関になっている。体力=命ともいえるので、時間は命と直結する。「時は金なり」というが、時が命であるならば、時は金以上の価値があるに決まっている。

私たちは金がないと生きていけないので、学んだり働いたりしながら貴重な時間=命を削って金にして生きているのである。

だから、学んだり働いたりすることが単なる金を稼ぐ手段だけであったら、それは単に命を削って金を得ているだけである。生きるために金を得て、金を得るために命を削る━━。そういうパラドックスに陥ってしまう。そうならないためには、学ぶことや働くことに少しでも意味や楽しみを見出さないと、人生をただ燃やしてしまうことにならないかとよく思う。

“アウェイ”に出向き、進化し続けよ

今回は東京からパリに入り、パリで2泊してからモロッコを6日かけて回り、最後にフランクフルトで1泊して帰国するという旅である。全日程が英語圏でないのと、かつモロッコはイスラム圏でありアフリカである。
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文=藤野英人

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