ライフスタイル

2019.11.17 10:00

インテリアデザイナーとしてロンドンで戦った女性が教える、暮らしを彩る3つの視点


自分にとって、面白いと思える伝統工芸品やアートを買うというのが良いと思います。家は、長い時間を過ごすところです。そこに伝統工芸をひとつでも取り入れると、満足度がぐっと上がります。まず、ひとつから始めてください。


毎日使うほうきを壁に掛け、「用の美」を体現

3点目は、伝統工芸品やアートを取り入れる時に、ぜひ産地や工房を訪ねてみてください。そのものについて学び、理解することで愛着が湧き、大事にしたくなります。日本の中で消えかけているものを守ることに貢献している「社会起業家」のような満足感があると思います。

そこで私がおすすめしたい工芸品は、意外でしょうが、ほうきです。

キュレーションホテル「桃乃八庵」では、毎日、ベランダやキッチンの掃除に使っている3つのほうきを壁にかけています。日常生活に使うものであり、とても綺麗につくられているので、それ自体が愛でるものになる。「用の美」を体現していますね。小さなほうきもありますし、タワシも同様におすすめです。

若い方なら、マグカップや豆皿なんてどうでしょう。伊万里焼をはじめ、全国にさまざまな産地があります。数千円から購入できます。職人が手をかけてつくった逸品は、ひとつずつ温もりが違うので、ぜひ現地を訪ねてお気に入りを探してほしいですね。

何気ない旅から、目的を持った旅にしてみる。現地に行ったら、その物への見方が全て変わります。色々なストーリーがついてくるので、買った人自身が伝道師になり、ほかの人に魅力を伝えたくなるでしょう。

日本は、江戸時代に高い山からの分水嶺で、急峻な川によって各藩が分けられてきたように、地理的な要因によってひとつひとつの場所のキャラクターが濃く、焼き物だけで何百といろいろなものがあり、豊かな工芸品が揃っていることに気づくでしょう。食べ物だって全然違います。

その素晴らしさを体感して、できるところから暮らしに取り入れてほしいですね。


伝統工芸やアートを取り入れ、暮らしを彩る(本人提供)

日本では最近、伝統工芸品を「KOGEI」として新たな美意識や価値観を発信する動きが盛んになってきた。工芸とは、本来、実用品に芸術的な意匠を施したもの。暮らしに取り入れ、使わなければ、無用の長物になってしまうだろう。長年海外にその魅力をモダンにアレンジして伝えてきた澤山だからこそ、彼女のエッセンスは私たちの生活に身近で取り入れやすいものばかりだ。


さわやま・のりこ◎新潟市出身。明治大学文学部で地理学、博物館学(学芸員)を修める。日本航空国際線客室乗務員を経て、ホテル西洋銀座などでサービス&人材マネジメントコンサルタントとして勤務。1995年、渡英。インテリアデザインやアートディレクションなどを学び、2000年ロンドンでインテリアデザインオフィスを起業。17年に帰国し、BABID(英国インテリアデザインビジネス協会)代表理事として、日本のプロジェクトと英国のインテリアデザイナーをつなぐ。18年に一般社団法人キュレーションホテル協会を設立。著書『キュレーションホテルが拓く伝統の未来』。

文、写真=督あかり

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