何とも不思議なトレンドだと思うかもしれないが、過去にさかのぼってみると、時代や国を問わず、「11月から4月」のほうが「5月から10月」よりも、株式投資で得られるリターンが大きいのは事実だ。このトレンドは、複数の国々と、イギリスのデータ300年分を研究したうえで検証されており、「sell in May(5月に売れ)」ルール、または「Halloween indicator(ハロウィーン指標)」とも呼ばれている。
とはいえ、絶対確実というわけではない。冬期にリターンが上向く確率は、一般的には半分ほどだ。それではあまり魅力的ではないと思われるかもしれないが、この戦略を使えば平均的には得をする。うまくいったときには、結構な利益が手に入るからだ。このパターンが長期間にわたって、また、程度の差はあれ、多くの国々で見られるという事実も、この戦略の裏づけになっている。
ただし、この季節性を利用した戦略は、市場ポジショニングを検討する際のひとつの材料にすぎない。ベン・ジェイコブセン(Ben Jacobsen)とチェリー・イ・チャン(Cherry Yi Zhang)による過去の実績の研究結果によると、冬の市場は夏と比べて年間で4%ほどリターンが上回っているとはいえ、たったひとつの検討材料を頼りにポートフォリオを決定するのは危険だ。
さらに、こうした季節性のパターンが通用し続ける理由は、完全には解明されていない。もしかしたら、気候や夏休みのせいかもしれない。あるいは、「1月効果」(1月に株価が上昇するという経験則)と、それと関連する「tax-loss harvesting」(値が下がった株式を売却して、値上がりした株式の収入分と相殺する節税対策)に関係している可能性もある。
この季節性パターンが、時期と国を問わず、あまねく通用しているというのは頼もしいことだが、この戦略が効果的である理由を裏づける証拠が見つかっていないらしいことは気がかりだ(研究者たちがあらゆる説を唱えているとはいえ)。