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2019.11.11

ソフトバンクの「まずい賭け」は次のメルトダウンの予兆か

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次のメルトダウン(相場の暴落)はどこから始まるか。これはよくある質問だし、世界経済の成長が11年目に入ろうとするなかでは、もっともな質問だとも言える。こうした景気拡大を終わらせる原因となるのは、2008年のリーマン危機のように、流動性の低い証券への過剰な投資だったり、00〜01年のITバブル破裂のように、強気一辺倒だった市場の崩壊──エコノミストが「ミンスキー・モーメント」と呼ぶ現象──だったりするからだ。

中国の銀行システムでレバレッジ(負債の活用)が恐ろしいほどの水準に達していることは、筆者もフォーブスのコラムで何度か取り上げてきたが、預金業務を手がける金融機関(商業銀行など)は基本的に相場の暴落から守られている。一つにはまさにその預金があるおかげであり(米国では大恐慌以来、本格的な「取り付け騒ぎ」は起きていない)、もう一つは、いざというときには中央銀行から金融システムに流動性を供給してもらえるからだ。

そのため筆者としてはむしろ、預金を受け入れておらず、緊急時に中銀などによる流動性供給から恩恵を得られない企業の方を心配している。その代表的な例がプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社だ。ドナルド・トランプ政権下で好調な経済が続く米国では、既存の産業を「破壊(ディスラプト)」する力を秘めた企業に、市場が以前には見られなかったほど高いバリュエーション(評価)を与えてきた。このテックブームにうまく乗り、良好な運用成績をあげてきたのがPE大手各社だった。

しかし、そうした破壊的な企業の今年の株価を見ると、良く言ってもむらが目立ち、今年5月に新規株式公開(IPO)を行った配車サービス大手の米ウーバー・テクノロジーズは、このコラムでも詳しく論じた通り、最近大幅安を演じた。そして筆者がピンときたのは、ウーバーのこのメルトダウンに接した時だった。

次のバブル破裂は、PE投資会社のバランスシート上で、バリュエーションが急に厳しく見直されることをきっかけに起こる──。そう直観したのだ。考えただけでもぞっとする事態だ。例えば金融大手の米JPモルガンであれば、不良債権を抱えていても、自行でそれを償却できるだろう。また、世界金融危機のような極端な状況では、政府が救済措置や不良資産の「リングフェンス(隔離)」などを通じて、そうした償却による経営への打撃を和らげてもくれる。
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編集=江戸伸禎

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