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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信


実際、これらの都市を訪れたことがある人は、ダウンタウンを中心に公共施設の至るところでホームレスが座っているのを目撃したはずだ。撮影スポットであるサンフランシスコのマーケット・ストリートをホームレスの姿を見ずに歩くことは不可能だし、ロサンゼルスの地下鉄をホームレスとの同乗なしに利用することはできない。

大きなプラスチックカップを(中に入っているコインを)ジャラジャラと鳴らしながらお金を乞う光景や、高速道路の出口で車列を縫いながら物乞いをする風景は、これらの都市ではとくに頻繁に見かける。

カップを持ち物乞いするホームレス

ホームレスの問題は、ホームレスの人たちの人権や医療の問題と、公共の美観の保護、ひいては観光客の集客力との微妙なバランスもあり、解決策はなかなか見つからない。

家庭内暴力などがあり、母親が幼児を抱えて家を飛び出しホームレスになると、各行政は具体的な身体的危機を認める限り保護する手段を持っているが、長期にわたってそれを継続することはできない。すると、母子はやはり橋の下に住むことになってしまう。

ホームレス一掃、ラスベガス市長の奇策

ホームレスの問題は、一般市民にはなかなか理解が難しく、また勤労意欲がないうえの自業自得だというような差別感情とも無縁でなく、排除には賛成でも支援には反対という態度は普遍的だ。なので、行政も綱渡りをさせられる。

日本でも、東京の台東区が台風19号の最中に避難所の小学校に来たホームレスを拒絶した。あの台風の中、建物の軒下でひと晩を過ごしたというのが支援団体の耳に入り、区長は猛抗議を受け、議会で謝罪する羽目になった。

筆者の住んでいるラスベガスでは、かつて市長がホームレスに小銭を与え、合意と契約のもとに片道切符のバスに乗せ、カリフォルニアで降ろしてラスベガスのホームレス問題を一挙に片付けたという嘘のような本当の話があるが、これはホームレスを切り捨てただけだとカリフォルニアの猛反発をくらい、今ではさすがにやれない。

そしてもう一つ大事なことは、投資が新たな住民を呼び込み、オースティンのように好況になって人口が増えてくると、地区のアパート代がどんどん値上がり、家賃を払えなくなってホームレスを生むという実に皮肉な矛盾もある。

南カリフォルニア大学でホームレス問題を研究しているゲイリー・ペインター氏によれば、「ここで寝るな」という排除型の政策は、問題をたらいまわしにしているに過ぎないとして、ホームレスの主要な問題は住宅コストであると指摘している。

たとえば、シリコンバレーの一部であり、全米一の家賃といわれるメンロパーク市の学校区では、世帯で1000万円以上の収入がないと「貧困家庭」と見なし、子供がホームレス化しないようにさまざまな支援を与えている。

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そして、ホームレスというのは必ずしも無職ではなく、昼は職場に行って夜は公園に張られたテントで寝るというパターンも、全米を見渡しても決して珍しくない。

州政府にプレッシャーをかけられたオースティン市当局は、とりあえずホームレスが街中でキャンプをすることを禁じた条例を制定し、ホームレス戦略オフィサーなる役職もつくって専門家を雇った。しかし、街が繁栄していく限り、どうやら問題解決は厳しそうだ。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太 写真=Getty Images

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