ドクター本荘の「垣根を超える力」

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先日、メルカリの代表取締役会長である小泉文明氏の話を聞く機会を得ました。それは、小泉氏と森まさこ法務大臣らが登壇した「誰もが取れる育休ノカタチ」という、10月22日に開かれたイベント会場でのことでした。小泉氏に聞いたのは、もちろん育休のことでした。

日本で育休(育児休業)は権利として認められていますが、男性の取得率はわずか6%。しかも5日未満が36%、1カ月未満が81%と総じて期間も短い。男性の81%が育休を取得したいと思っている(日本生産性本部「新入社員意識調査」)にもかかわらずです。つまり、育休を取得しようとしても、取るに取れない職場になっているのが現状です。

ところが、メルカリでは男性社員の育休取得率は80%以上に上り、しかも平均して2〜3カ月は休んでいる人が多いそうです。どのようにこれを実現しているのか? この記事では、社会問題としてでなく「企業経営の視点」から、育休に関するメルカリの施策をみていきましょう。

「選ばれる企業」になるために

メルカリでは、育休中の給付金と給料の差額は会社が負担するため、社員は収入の不安を感じずに育休を取得することができます。なぜこのような環境を整えているのか。小泉氏曰く、優秀な人材を得るため、またその人材に高いパフォーマンスを出してもらうためです。

IT技術者不足はよく知られていますが、その獲得競争は熾烈です。日本に限らず、世界数カ国からトップ級の人材をリクルートするメルカリにとって、そのインパクトは計り知れません。

「今までの日本社会は『会社が上で、個人は下』だったけれど、これからは会社と社員が横の関係。僕らが社員から選ばれなければいけなくなる。しかも競争相手はグーグルのような巨大企業なのです」と小泉氏。

また、これまでの世代と若い世代は、意識も違っています。小泉氏は、「僕らより下の世代はファミリーを一番大事にしている。だから僕らは社員にお金をかけるんです。そうすれば、彼らは応えてくれるから」と言います。

この「応えてくれる」は、メルカリより前に経営していたの会社で、育休空けの人たちのパフォーマンス向上を目の当たりにしてきた小泉氏の実体験がベースとなっています。

家庭が安定すれば仕事にも身が入る。パフォーマンスが上がれば、それが評価され仕事もさらに楽しくなる。おのずと離職率も下がる、というわけです。

復職後のケアも充実しています。子供が認可外保育園に入園した場合でも、認可保育園の保育料との差額を会社が負担し、病児保育代も会社が全額無制限に会社が負担。さらに妊活のサポートもしています。

これらのケアにより、安定感のある大企業からメルカリへの転職でも奥さんからのストップがかかり難く、採用成功率も抜群に上がったそうです。

一見、会社負担が増えコストがかさむようでも、逆に採用エージェントに支払う金額が少なくて済むなど、目に見える経済性もプラスになっていると言います。

文=本荘修二

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