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いまおいしい、いま知りたい食のトレンド最前線

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は11月号(9月25日発売)より、農口尚彦研究所「山廃 愛山」をご紹介。引退から舞い戻った伝説の杜氏、農口尚彦が生み出す食中酒だ。


日本酒の海外輸出はこの10年で本数において約2倍、金額において約3倍に拡大している。

一方、この5年間で日本酒全体の出荷量は10%程度減少しているにもかかわらず、純米~大吟醸などの“こだわりの日本酒”は逆に10%程度上昇を続けているというデータもあるから、そこから見てとれるのは、いま、こだわりの日本酒がその需要を拡大し続けているというトレンドだ。

最近ではフレンチと日本酒や、焼肉と日本酒のペアリングを提唱する飲食店も登場。日本酒は紙パックやカップで安価な酒ではなく、ワイン同様、造り手のこだわりや特徴を知ったうえで、ときにはヴィンテージ(生産年)も気にしながら飲む、高級な嗜好品へと変化を遂げた。

そこへ2年前、日本酒ファンをざわつかせたニュースが、伝説の杜氏、農口尚彦氏の復活だ。

農口氏は昭和7年生まれで現在86歳。石川県鳳珠郡で代々受け継がれた杜氏の家に生まれて、16歳で酒造りの道へ入った。

なにより彼の名声を高めたのは36年在籍した「菊姫合資会社」にて、連続12回全国鑑評会金賞受賞、通算24回金賞を受けたという輝かしい記録だろう。

他の追随を許さない金字塔を打ち立てた杜氏はいったん引退したものの、情熱冷めやらず、84歳で酒造りの世界へ舞い戻ってきた。まさに伝説の杜氏だ。

その農口尚彦杜氏がとくに高く評価されているのが山廃。戦後、量産に適した製法に押され姿を消しつつあった「山廃仕込み」の技術を復活させ、山廃復活の立役者ともなった。

しっかり感じる米の旨み、喉越しとキレの良さ、複雑味とフレッシュな酸味が特長の山廃は、食中酒として、ワイン同様のポテンシャルを感じさせる。

「農口杜氏による愛山の山廃は、コクとし っかりとした味わいがありながらも、みずみずしく軽さもあるのが魅力。穴子や鮪の鮨とも相性がいいです」と語るのは、予約がとりにくいことで知られる名店「鮨なんば」の大将である難波英史氏。

丁寧な仕事で血抜きし、4日間タレに漬け込んだあんきもは、供する直前に周囲を磨き(切り落とし)、芯にあたるパーツだけを切り出す。

雑味のない、ピュアな味わいのあんきもを舌に乗せ、追って山廃の愛山をひとくち、ふたくち。波のように押し寄せる旨味に思わず目を閉じる。陶然という二文字がふんわりと浮かんでくる。



Noguchi Naohiko Sake Institute YAMAHAI AIYAMA 農口尚彦研究所 山廃 愛山

容量:720ml
米品種:兵庫県産愛山
精米歩合:55%
価格:5000円(税別参考小売価格)
問い合わせ:農口尚彦研究所

photographs by Jiro Ohtani | text and edit by Miyako Akiyama

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