貴重品と肩書はロッカーに
「また、フィンランドでは湖水地方にサウナが何千もあって、自然と一体となって楽しむものなんです。水風呂というものもなく、湖や雪の上、海の氷に開けた穴などで身体を冷ます。
その流れが日本にもようやくやってきて、テント式やトレーラー式のサウナを持参して楽しむアウトドアサウナが流行りはじめています。キャンプやBBQとサウナをくっつけたサウナキャンプというイベントも増えている。これなら水着で男女一緒に楽しめますからね」
温泉施設の隅っこというクローズドな世界から、徐々にオープンエアな場へと広がり、写真を撮ってシェアもしやすくなった。その結果、さらに若者が集まる場になったということなのだろう。
サウナのあとに湖に入る佑介さん(35)、美緒さん(36)夫妻。4年前、新婚旅行でフィンランドに行ったのをきっかけにサウナーに。
「あとは、サウナ業界では『貴重品と肩書はロッカーに閉じ込める』というのがルール。初対面で裸のコミュニケーションを経てから、ロッカーで名刺や連絡先を交換するんです。それで相手が実はけっこう偉い人だったとか、仕事をしてみたら非常にスムーズだったという話はよく聞きます。
『経営判断は、サウナで検討し、水風呂で決断する』なんて名言を残した経営者もいますし、サウナ会食をされている方も多い。最初に男女個別にサウナに入ってから食事に行くサウナ合コンも流行り始めています」
移動式薪サウナ「SAUNA TOUSTER」内。左から川本健太さん(30)、阿部俊介さん(28)、田嶋誠一郎さん(30)。3人は同僚で、普段もよく仕事後にサウナに行くという。
ヘビーサウナーの30代の友人によれば、「2〜3時間、下手すると5〜6時間ケータイを手放す、つまりデジタルデトックスができるのもいい」とのこと。
昭和の高度成長期、自宅に風呂があるのが一般的となった日本。現在の“サウナ”はもしかしたら江戸時代の庶民にとって情報交換の場、憩いの場であった“銭湯”のような立ち位置にあるのかもしれない。
会場内の特設ステージでは著名サウナーによるトークショーも連日開催された。左から「サウナイト」主宰・YGQさん、お笑い芸人兼熱波師のマグ万平さん、マンガ『サ道』の著者・タナカカツキさん、サウナブログのカリスマであり「ととのう」という言葉を初めて使った「濡れ頭巾ちゃん」さん、写真家兼プロサウナーの池田晶紀さん。