労働者のニーズの変化に対応 1日5時間勤務制は今後流行に?

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実験は初めの頃は成功したが、従業員は余暇の時間を少し楽しみ過ぎたとアーストルは語っている。その後、会社がスタートアップの文化を失うにつれてプログラムは撤廃され、1日5時間勤務は夏だけの限定とされた。

この傾向は、逼迫(ひっぱく)した労働市場における労働者の需要の変化と合致している。ギグエコノミーにより、現在では好きな場所で好きなときに働くことがより主流になった。在宅勤務は10、20年前はあまり聞かれなかったが、現在では非常に一般的となっている。

企業では、従業員の満足度を向上させ人材を引き留めるため、ジョブシェアリング(フルタイム勤務者が通常1人でこなす職務を2人組で対応すること)や週4日勤務制、ホットデスク(複数の人が一つの机やコンピューターを共有すること)、遠隔勤務などの取り組みも試行されている。若い世代にとっては、柔軟な勤務時間や健全なワークライフバランスが報酬の高さよりも重要だ。

とはいえ、顧客がこうしたプログラムにたじろぐ懸念もある。ウェブデザイナーから「これから帰宅するのでフォローアップは明日にする」という話を12時45分に聞きたい人などいないだろう。そうなれば、業者が自分のニーズに熱心に対応してくれていないという居心地の悪さを感じるはずだ。

料金を支払ってアプリやインターネット関連の仕事を依頼している企業は、引き受けた人に仕事を終えてほしいと思っている。半日勤務のスケジュールのせいで約束よりも納期が長引いたとしたらいら立ちを覚えるはずだ。一部の顧客には、これが正しいことに思えないだろう。同社は、仕事を終わらせるため、従業員が少し長めに働かなければならない場合もあると認めている。

事業が停滞したら、管理職はむちを打ち、従業員が確実に最大限の能力を発揮するよう一挙一同を監視するようになるだろうか? 従業員は机で食事をしたり、仕事が終わるまで食事を我慢したりすることが求められているのだろうか? あまりに長い間会話をしていると、管理職に止められるだろうか?

また、トイレ休憩やウェブサイトの閲覧履歴は厳重に監視されるだろうか? ロボットのように扱われるほどの価値が、勤務時間を3時間短縮することに果たしてあるだろうか?

米国での雇用率が最高水準を維持する限り、多くの企業は新たに従業員を採用しつつ、現在雇用されている従業員の満足度とやる気を維持するため創造的な解決策を提供するよう強いられるだろう。そうでなければ、有能で賢い従業員を、5時間勤務制のような魅力的な制度を提供する競合企業に取られてしまうリスクが生じるはずだ。

翻訳・編集=出田静

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