米紙ウォールストリート・ジャーナルは、従業員わずか16人のドイツの小企業、デジタル・イネーブラー(Digital Enabler)に関する記事を先日掲載した。
ウェブサイトやアプリケーション、電子商取引サイトを作成する同社が他社と違う点は、ラッセ・ラインガンス最高経営責任者(CEO)が従来型の勤務時間ではなく1日5時間勤務制を導入したことだ。ラインガンスは、集中を邪魔されずに仕事に集中すれば、従業員は業務を5時間で終わらせることができると考えている。
しかし、これにはちょっとしたコツがある。携帯電話は鍵をかけて収納することになっており、ソーシャルメディアは禁止され、生産性のない会話は避けるよう奨励されている。こうすることで、従業員のやる気と生産性が大きく向上し、午前8時に勤務開始し午後1時には退社できるとラインガンスは考えている。そうすれば、従業員は仕事後にリラックスし、仕事以外のプライベートの時間を持ち、リフレッシュした状態で職場に戻ることができる。
ラインガンスは、これにより従業員の満足度が高まり、顧客により良いサービスが提供できると主張した。労働者の燃え尽き症候群など職場に関連した心の病の問題が急速に増える中、1日の勤務時間を減らすことが良い効果を生むかもしれない。
1日5時間勤務には課題も
1日5時間勤務制には課題がないわけではない。従業員は、少ない時間で同じ量の仕事をこなすためプレッシャーを感じると述べているし、勤務時間中は家族や友人には連絡できないため、その点でも調整が必要だ。
ラインガンスが見本としていた米企業、タワー・パドル・ボーズ(Tower Paddle Boards)は以前、従業員に5時間勤務制を提供していた。同社のステファン・アーストルCEOは昨年、ストレスと燃え尽き症候群の解決を目指す情報サイト、スライブ・グローバル(Thrive Global)に記事を執筆し、短時間勤務制を褒めたたえている。
「机に8時間向かっているからといって、生産的だとは限らない。優秀な従業員であってもおそらく、実質的な仕事の2~3時間分ほどしか終えられないだろう。1日5時間勤務で大事なのは、短い時間で一気に働くことで、人間のエネルギーをより効率的に管理することだ」(アーストル)
アーストルは、5時間勤務制は勤務時間を短縮することで高い生産性を発揮する時間を作る強制的な時間管理法だと主張した。