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2019.11.12 17:00

ステマ疑惑で揺れるインフルエンサー、SNS。企業は、個人は、どうする?

連載「#インフルエンサーの研究」

連載「#インフルエンサーの研究」

吉本興業所属の漫才コンビに京都市が100万円を支払って依頼したPR施策のツイートに、「ステルスマーケティング(ステマ)」ではないかとの議論が起きた。

京都市、吉本興業側ともに「ステマではない」との見解であるが、スポンサード表記がないまま、オーガニック投稿のように発信することについては各方面から異論が出ている。実際のところ、プロモーション施策であることが明示されていないと、フォロワーには通常の投稿との違いは分かりづらい。

ツイッターの2投稿に計100万円の値段がついていたことについても、インフルエンサーマーケティングの上景気を示す数字で、驚きをもって受け止められている。

また、芸能人やインフルエンサーがブログやSNS上でこぞって紹介していた「血液クレンジング」について、その効果を疑問視する声が上がっている。その効果やリスクについては11月6日、衆院厚生労働委員会でも取り上げられた。

にわかに揺れる「インフルエンサー」界隈。奇しくもForbes JAPANは9月発売号の誌面とウェブで、インフルエンサーという現象について多面的に特集した。



識者をアドバイザリーボードに迎え、TOP INFLUENCER 50を選出、「真のインフルエンサーの条件」を考察した。また水原希子さん、前田祐二さん、藤原ヒロシさん、野村訓市さん、HIKAKINさんら、数々のトップインフルエンサーに取材をし、その発信の原動力に迫った。

またアドバイザリーボードからは貴重な指摘が相次いだ。

「個人の論理」が「組織の論理」を凌駕する時代にきているのだから、組織内インフルエンサーを歓迎せよ、と論じたのはアジャイルメディア・ネットワーク アンバサダーとピースオブケイク noteプロデューサーを兼任するブロガーの徳力基彦氏。

クリエイティブプランナー・ブロガーのまつゆう*氏は、まさに昨今の騒動を予期するかの如く、SNS上で蔓延る「ステマ」問題への警鐘を鳴らした

名古屋大の笹原和俊氏からは、科学的事実に基づき、拡散のメカニズムについて「ソーシャルメディア空間では、各種の感情の中で『怒り』がもっとも拡散されやすい」との興味深い指摘があった。

インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「indaHash」(インダハッシュ)のカントリーマネジャー、野村肇氏は、インフルエンサーを「拡散装置」としてだけでなく、「プロシューマー」として、より上流から協業することの重要性を説いた

個人の発信力はリスクか? 可能性か?

インフルエンサーは決して新しい概念ではないが、なぜForbes JAPANが今、インフルエンサーを特集したのか。

インターネットとSNSの登場と成熟が、一部の「個人」に発信力と拡散力を与え、それらがビジネスに直結し、新しい生き方の台頭をもたらしているのが今という時代だからである。やはり今、あらゆる組織や個人が岐路に立たされている。

徳力氏の指摘に共通するが、突き抜けたインフルエンサーはさておき、個人のSNSにおける発信力や拡散力を企業がリスクとみるか、大いなるポテンシャルであるとみるか、それによって企業や個人の成長可能性がずいぶん違ってくるのではないだろうか。

企業はいま、悩んでいる。公式アカウントでの発信は増えたが、社員個人のSNS発信についてはかねてからリスクととらえてきた企業も多い。社員や従業員が非常識な言動をアップし、企業として謝罪するに至るケースが多発したためだ。「防衛手段」として、社員や従業員のSNS使用を制限してきた。

企業の対応はまちまちだ。社員に対しSNS自体厳禁、SNSはOKだが所属先や仕事内容につながる情報を書くのはNG、個別に許可制を採る、など。もちろん、特段の制限を設けない企業もある。

一方、「個人の論理」で考えてみたい。インフルエンサーが続々と登場し、大きな収入を得られる手段にもなった。SNSがリアルとリンクし、身近に実名で発信する人が増えた。SNSでの実名アカウントが副業や転職の役に立った、そんな話も聞く。誰しも言いたいことは、ある。

さて、やるか、やらないか。多くのビジネスパーソンが逡巡しているのではないか。個人は、企業は、どうする。
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文=林亜季

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