オラクルが46億円の公立高校舎に秘めた「イノベーションのレシピ」

dTech高校エントランス

2001年ごろ、オラクルCEOサフラ・キャッツと、オラクル創業者で元CEO(現会長兼CTO)のラリー・エリソンは、生徒たちが「どの様に考えるか」を学ぶ学校を創設したいという夢を語りあったことがありました。

そして昨年、オラクル教育財団のサポートで、デザインテック高校(通称「d.tech」)の新校舎がカリフォルニアに設立されました。これは「シリコンバレーの企業が自社敷地内に高校の校舎を設立した初の事例」であり、「ミレニアル人材のモチベーション維持」と「イノベーションを生み出せる力を育むこと」のすぐれた両立例でもあります。

デザイン思考に力を注いでいるd.tech高校は、1学年138名の定員に対して600〜900名の応募がある地域の人気校です。同校とオラクルの関係は2014年の同校開校時から育まれていましたが、それが2018年1月、同社のカリフォルニア、レッドウッドショア (シリコンバレー地域)キャンパス内の約64000平方フィートを活用した、4300万ドル、約46億円をかけた校舎という形で実を結んだのです。

注目すべきなのは、このd.tech高校が私立ではなく公立高校であることです。私立ではなく、どのような家庭環境の子どもも参加できる「公立」の学校として最先端の教育が提供できる意義は、大きいと思います。

先日、このパートナーシップの立役者であるオラクル教育財団を訪問する機会がありました。以下、このd.tech高校とオラクル教育財団のパートナーシップの「セレンディピティと呼んでもよい」成り立ちや目的についての、オラクル教育財団のエグゼクティブ・ディレクター、コリーン・キャシティ氏の回答をご紹介します。


シリコンバレーの企業との「セレンディピティ」

今回の取り組みは、「シリコンバレーの企業が、会社の敷地内に高校の校舎の設立を行う」初の試みでした。

学校の土地がサンフランシスコ湾岸にあったことも、認可の上で複雑性を増す条件でした。結果的にはd.tech、オラクル、オラクル教育財団、2つの学区、レッドウッド市、湾岸に建物の施工を認可するサンフランシスコ湾保護と開発委員会のパートナーシップにより実現しましたが、すべてのきっかけは、オラクル教育財団による新規プログラムのデザインへの取り組みでした。

今回の校舎設立は綿密に計画されて実現したというよりは、ある種セレンディピティと呼んでもよい、素晴らしい機会に恵まれたことがきっかけとなっています。

当時、われわれは財団として新しい教育プログラムを模索していました。またオラクルCEO兼オラクル教育財団の取締役会長であるサフラ・キャッツは、オラクルの社員に、ボランティアで財団の活動に関与し、生徒の学びの体験に関わってほしいと思っていました。
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編集=石井節子

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