オラクルが46億円の公立高校舎に秘めた「イノベーションのレシピ」

dTech高校エントランス


従業員は、財団のクラスのコーチとなり、若い生徒達に自分の知識やスキルを教えることで活力を得ています。また、とても創造的で、われわれの想像を超えるプロトタイプを作る学生たちのアイデアに刺激を受け、結果として従業員は生徒と共に学んでいるんです。

オラクルでも全ての従業員がデザイン思考の実践者ではないので、学ぶ良い機会になっています。インターセッションに参加した後、他の従業員にデザイン思考を教える人もいます。


オラクルの社員と生徒たちのインターセッション風景

この様なボランティアプログラムが社内にあるのは、従業員の定着に役立っています。ボランティア活動は、トップ人材を惹きつけ、定着してもらうためにとても大切です。特に、ミレニアル世代やZ世代は、社会的に責任のある行動をとる企業、しかも就業時間内にボランティア活動ができる企業に勤めたいと思っています。

オラクルでは、世界中で約12万5000時間を、NPOや政府機関外の組織へのボランティアに費やしています。

オラクルの考えるトップ人材像──イノベーションのためのレシピ

だれもが、d.techが育成を目指すような、「統合した思考力を持ち、知識をアクションにつなげられる人材」を採用したいと思っています。深い知識を身につけ、それを統合することで、他者のために役立つサービスを実現できれば理想的です。

オラクルのトップには、フレキシブルで、環境に順応することができる人材が選ばれます。彼らや彼女たちは、「全ては常にプロトタイプにすぎない」とわかっています。完璧な、永遠のソリューションなどないのです。社会と環境はプロトタイプとともに進化していきます。

別の言い方をすれば、デザイン思考を体得することで、どんな変化が訪れても、課題を解決する力、クリエイティブコンフィデンスを育むことができます。共感というソフトさと、やり抜く力というタフさの掛け合わせが、まさにこれぞ、「イノベーションのためのレシピ」です。トップ人材は、このような資質を兼ね備えています。


d.tech高校内観

「教科ごとに切り離す」ことの愚

オラクル教育財団では、現在インターセッションで7種のクラスを提供しています。プログラミングの初歩と物理的なコンピューティング、3Dデザインと商品開発、ウェアラブル技術、データビジュアリゼーション、IoT、人工知能(AI)、ゲームデザインです。今後も増やしていく予定です。

また、「オラクルギビング」というグローバルの助成金プログラムでは、カーネギーメロン大学、ロンドンのキングスカレッジといった大学や総合大学が開発する無料のプログラムを通して、コンピューターサイエンス教育を支援しています。

私自身は、オラクル教育財団やオラクルのフィランソロピー活動の中では、特にSTEAM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、アートと数学)が魅力的と思っています。

テクノロジーやアート、数学これらをばらばらの教科と考えるのは間違っています。なぜなら、地球の生態系が繋がりあっているように、学びを教科ごとに切り離すのは不自然だからです。材料がどこから来ているか、児童労働を使っていないか、排気ガスのレベルはどの程度なのだろうといったことを、 生徒達が考えられるように励ますことは必須です。

加えて市民教育もとても大切な分野です。われわれの自由を当たり前だと思ってはいけないのです。生徒達が法律を理解して、民主主義の社会の一員として力を発揮できるようにサポートすることが大切です。

編集=石井節子

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