SNS発のファッションブランド、「Cat & Parfum」はそうして生まれた。
さて、「Direct to Consumer」、略してD2Cと呼ばれるビジネスモデルが注目を浴びている。自ら獲得した顧客とのつながりをベースに、自社で開発した商品を直接販売するものだ。店舗を持たないことで小規模からビジネスを始められるため、ファッションや美容などのジャンルが特に盛んだ。
そのD2Cによる、コラボレーションファッションブランド「Cat & Parfum by WAYLLY」が誕生。仕掛け人は、株式会社ケースオクロック社の開発、“くっつくスマートフォンケース”の「WAYLLY(ウェイリー)」プロデューサー兼同社取締役の三浦孝太。
三浦と、Cat & Parfumデザイナーの天間香奈枝のふたりに両者が業務提携をした狙いを聞くと、意外なほどに純粋で情熱に満ちたストーリーがそこにあった。
そもそもWAYLLYとは。Cat & Parfumとは
まず簡単に、WAYLLY、そしてCat & Parfumについて説明しよう。
WAYLLYはSNSを中心に人気を博すスマートフォンケースのブランドだ。2017年9月に販売を開始してからの累計販売個数は50万個を超える。その特徴は「壁にくっつく」、「着せ替えができる」そして「衝撃に強い」の3点。
プロデューサーの三浦は言う。
「以前はインクジェットでプリントした独自デザインのスマートフォンケースを販売していましたが、他のブランドとの差別化が難しいという問題がありました。そして壁に貼り付けられるスマートフォンケースというアイデアが生まれたのです。この独自性を“自撮りに役立つ”という利便性からプロモーションを行ったところ、わかりやすい特徴からテレビや人気YouTuberに取り上げられヒットしました。売上の80%は女性です」
WAYLLYでは顧客層である女性のために情報発信メディア「WAYLLIST【ウェイリスト】」を立ち上げた。Cat & Parfumの天間香奈枝との出会いもこのチャンネルだ。
天間は1994年に青森県の七戸町で生まれる。小学生のころに父親のパソコンで検索して海外の生活、なかでもアメリカ西海岸の開放的なカルチャーに憧れを抱くようになる。やがて高校卒業とともに、親、教師の反対を押し切り単身ファッション留学。サンタモニカでファッションデザインとマーチャンダイジングを学び、その後LAのアパレルブランドで働いてECの仕組みやインスタグラムを活用したマーケティングに触れる。
Cat & Parfum by WAYLLY デザイナー天間香奈枝
天間は2016年に帰国。東京でインスタグラムでのPRを行う企業でインターンとして働き始める。当時担当していたクライアントはアメリカンイーグルや、レミーコアントロージャパンなど。
「Cat & Parfumを立ち上げたのはLA留学時代です。インスタグラムでカリフォルニアのカルチャーや旅をテーマに情報発信をしながら、自分で買いつけたり、ハンドメイドで作った服や小物をひとりでこつこつと販売していました。インスタグラムのフォロワーが5000人くらいでした」
本気のマイクロインフルエンサーがもつ、強度
WAYLLYのプロモーションのために、発信力のあるインフルエンサーやタレントを起用してきた三浦にとって、天間が発信する世界観に共鳴するフォロワーとの強い結びつきは新鮮に映ったという。
「やがて5Gの時代が来ます。生活に密接するいろいろな商品のIoT化によって、生活の最適化が進む。消費者へ提案される商品はパーソナライズドされ、人々は他の新しいものを選ばなくなる。その時代にあって私達のような中小企業では、利便性の面で大手に勝つことはできません。利便性が高まる時代が来るからこそ、Cat & Parfumのようにカルチャーやアートがある洋服でひとりひとりに合った世界観を提供していくことに価値が高まると考えました」(三浦)
Cat & Parfumと業務提携するというオファーは、WAYLLYから。生産やプロモーションの部分で支援することで、天間がこれまでひとりでできなかった規模でバックアップするという。スマートフォンケースと洋服では生産の拠点となる工場こそ異なるものの、WAYLLYで培ってきたパイプを活用し、充分な生産体制を整えることが可能だと三浦は言う。
「カナエさんの価値観に共感したファンが服を買っているという点に注目し、価値観を最大化していきたい。マーケットインよりもプロダクトアウトに力を注ぎます。」(三浦)
株式会社ケースオクロック 取締役 三浦孝太
Cat & Parfumには以前からブランド力に注目する企業からのコラボレーションのオファーがあったというが、実現には至らなかった。WAYLLYは何が違ったのかと天間に尋ねると、彼女は即答する。それは「自分らしさを出してほしい」という三浦の言葉だったという。
自分の内面や人格を発信することが、これからのインフルエンサーの在り方
「インスタグラムにはプラットフォームの特性上、写真映えする投稿を続けるとフォロワーが増えやすいです。カナエさんもそれまでの経験からよく知っていることです。しかし、彼女はいたずらにフォロワーを増やすことはしませんでした。ただ、自分が好きなことを本気で発信しているカナエさんがいて、そのパッションに共鳴するフォロワーがいる。その関係に憧れすら感じたのがオファーの経緯です。
今回の業務提携として私達は生産の体制やプロモーションでバックアップはしますが、あくまでもカナエさんがいままでのように発信を続けていくことこそが重要だと考えています」(三浦)
三浦はインスタグラムがいいねの数を表示しなくなったことを指摘する。本当に大切なことはエンゲージメントの数ではなく、質であるということに人々は気づき始めている。
たとえばCat & Parfumでいえば、天間が短い丈のスカートを履いて足を出しただけで「はしたない!」と叱られていた環境から、単身アメリカに渡り、学校ではベイビーと呼ばれて幼さをバカにされながらも、履いていた厚底サンダルを褒められて友達になったり、自身がインスタグラムで表現したことにコメントがつき、やがてそのファンの輪が拡大していった。その共感を生むストーリーにこそ価値がある。
「インスタグラムは雑誌だと思って投稿をしていました。私は雑誌の編集長。ただ作った服を載せるのではなく、行きたいカフェや行った町、路地裏で見た風景や旅のHow To。写真もフイルムのカメラにこだわりました。そうして自分が大好きな洋服を着て、チャレンジして、自分にはなんでもできるということを発信してきました。それを表現するために服があります。
インスタグラムがなくなったとしてもブログで発信は続けていきます。時代が変わっても、どんな媒体に変わったとしても自分の好きを発信することを続けていきたいと考えています」(天間)
従来、インフルエンサーの影響力とは数にあった。10万人のフォロワーを持つインフルエンサーが商品を掲載し、商品の露出が増えるという構造だった。フォロワーが1万人以下、つまりブランドとしてのマーケットは小さい。得られる利益も莫大ではない。今後どのようにマネタイズをしていく考えなのだろうか。
「カナエさんにもっとインフルエンス力をつけてもらう事ではなく、まずはCat & Parfumをブランドとして育てていくことを主眼においています。映画で例えるならカナエさんは監督。そして『Cat & Parfum by WAYLLY』という映画の主演女優を誰にするのか?どのようにプロモーションするのか?それを会社でバックアップしていくイメージです。
カナエさんにはインフルエンス力を求めているのではなく、ブランドを本気で育てていく事に注力してもらいます。音楽のライブを見に行けば、アーティストごとに全く違うファンがいることを目の当たりにするように、自分が本気でやりたい事をやっている人は、その人なりのファンがつく。カナエさんは“これが好き”を発信することができる才能のひとり。そういった人たちをバックアップしていきたいという思いの強さで今回のプロジェクトを進めています」
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