だが、従業員に一日中作り笑いを強いるとことは代償を伴う。バッファロー大学とペンシルベニア州立大学が実施した新たな研究により、笑顔を無理強いされていると感じる従業員は退勤後、すぐに深酒をしがちだということが分かった。
研究の結果は、産業保健心理学ジャーナル(Journal of Occupational Health Psychology)で発表された。対象となったのは、教師、看護師、飲食サービス従事者など、一般の人々と接する仕事に就く人だ。とはいえ、これは営業やマーケティングなど、人を相手にする職業なら何にでも当てはまるだろう。
こうした職業ではしばしば、自分がどんな気分であろうと無理に笑顔を作ることが求められる。さらに、その仕事で成功できるかどうかは、眉をひそめたくなる気持ちを我慢するなど、嫌な感情を抑える能力にかかっている。つまり、自分の収入は、顧客が常に正しいかのように笑顔を作れるかどうかにかかっているのだ。たとえ自分やその担当部署ではどうしようもないことについて文句を言われたとしても。
自分の感情は抑えながら、笑顔で周囲のニーズに敏感に応じることで、売り上げや良い評価につながることもあるし、時には商談も成立するかもしれない。だが科学の世界でこれは「表層演技」と呼ばれ、従業員を疲弊させ、意志を弱めるものとして知られている。こうした職種の人々はいずれ、すぐにでも飲酒したい気持ちを抱えて職場を後にするようになる。
ペンシルバニア州立大学のアリシア・グランディ教授(心理学)はプレスリリースで「ただ嫌な気分だから酒が欲しくなるわけではなく、仕事でネガティブな感情を抑える必要に迫られれば迫られるほど、仕事後の飲酒を抑えられなくなる」と述べている。
これは、仕事にやりがいを感じられない人にとって特に当てはまる。例えば、患者に笑顔を向ける看護師は満足感を持つのに対し、商談を成立させたいがためだけに笑顔でいる営業担当者は微笑み続けることで消耗してしまう。