「真のブランド力を培う」ための3冊|クリエイターの本棚

『ストーリーで伝えるブランド シグネチャーストーリーが人々を惹きつける』(ダイヤモンド社)


漫画において、読者に目で見えているのは「絵」とそれを補う「言葉」だが、その奥にある「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」という基本四大構造がそれぞれにつながりあって1つの作品をつくり上げているとし、同氏はそれぞれの考え方について、まさに帯にある「企業秘密」と言えるくらい、贅沢な創造の知恵を惜しみなく公開している。

この連載の読者のほとんどが漫画を描く人ではないと思うが、企業のマーケティング担当者はもちろんのこと、自社や自身が持っている力を物語にして伝えたい人すべてに大きな影響を与えてくれる本であることを約束する。

企業や個人の魅力を伝えるための、キャラクター、ストーリー、世界観、テーマを設定することができたとしよう。それをいかに「文章」に落とし込んでいくかが難題である。そんなとき、あなたの力になってくれるのが、古賀史健著『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社新書)だ。本書は美文の書き方を説くものではない。

古賀史健著『20歳の自分に受けさせたい文章講義』

人は普段難なく言葉を話しているのに、いざ文字にしようとすると行き詰ってしまう。そこで古賀氏は、いきなり書こうとするのではなく、頭の中にあるグルグルを一度“翻訳”するつもりでアウトプットすれば、書くことができるようになると説く。

文章を書き始めて、私たちがつまずきがちな、句読点の打ち方、改行のタイミング、漢字とひらがなのバランスなどについても、明確な古賀氏流理論が示し、書く際の迷いを取り除いてくれる。

誰に向かってストーリーを伝えるかに関しては、「読者の『椅子』に座る」ことの重要性を説く同氏の理論が大きなヒントになるだろう。

ここまで来て矛盾することを書くようだが、SNSでの情報発信が簡単になった分、実績や実力がなくても、セルフブランディングと銘打って風貌や発言に少しエッジを効かせれば、新興メディアの目に止まって発言の場を得られる時代であることも事実だ。しかし、それでは「登壇士」として消費されて終わりである。

人から信頼を得られる実績を生み出し、その過程で生まれたストーリーを盛ったり粉飾したりすることなく、「等身大」で伝えていく──。そうすることで、真のブランドを形成することができるのではないだろうか。日々真摯に実績を積み重ね、実力を培っているビジネスパーソンに、所属組織や自身のブランド価値を高めるために、ぜひ読んでいただきたい3冊だ。

連載:クリエイターの本棚
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文=川下和彦

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