ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害事件が発生後、サウジアラビアに反発する声が高まっており、サウジの政府系ファンドがシリコンバレー企業に出資を行うのは事件以降で初めてとなる。
WSJは複数の関係者から得た話として、出資は今年1月に完了し、クラウド・キッチンズは50億ドルの評価を得たと伝えた。
今回の出資は、カラニックとサウジのつながりを復活させるものだ。サウジの政府系ファンドを率いるヤシル・アルルマヤンは、2016年にウーバーに35億ドルを出資しており、その翌年にカラニックがウーバーを追放された際も、カラニックを支援していた。
クラウド・キッチンズはフードデリバリー専用の「客が来ないレストラン」を展開するサービスで、レストランのオーナーらにデリバリーに特化した調理場を貸し出している。同社は米国やその他の諸国で、格安の物件を買い入れ「ゴーストキッチン」として活用するほか、自社でもデリバリー限定レストランを運営している。
カラニックはウーバーの株式の売却により手に入れた自己資金、3億ドルでこの事業を立ち上げていた。ウーバーもフードデリバリーサービスの「ウーバー・イーツ」を展開しており、クラウド・キッチンズが将来的に競合となる可能性もある。
一方で、ウーバーの事業は順調とは言えない。同社は今年の第3四半期に11億ドルの損失を計上した。ウーバーの株価は5月のIPOから大きく下落しており、上場後のロックアップ期間が終了した11月6日には上場来安値を更新し、26ドル以下に下がった。IPO時の株価は45ドルだった。
カラニックは現在もウーバーの株式4%を保有しており、取締役会にも残っている。フォーブスは彼の保有資産を32億ドルと試算している。
カラニックは2009年にウーバーを創業したが、セクハラ問題やドライバーに対する暴言、ウェイモからの自動運転技術の窃盗などの一連のスキャンダルを受けて、2017年にCEOの座から追放されていた。