「一帯一路」香港サミットで痛感した日本の存在感のなさ

DuKai photographer / Getty Images

大規模デモが続いているため、開催が危ぶまれていた「一帯一路」香港サミット2019に出かけてきた。

9月11~12日に開催が予定されていたが、林鄭月娥(キャリー・ラム)香港特別行政府長官は、直前の9月4日に、デモの元々の原因ともいうべき、「逃亡犯条例改正案」の撤廃を発表していた。

それは、デモを少しでも抑え、この「一帯一路」香港サミットを何としても開催することで、香港および中国政府の関係者や関係諸機関の威信と面子を保つ意味もあったのではないかと推測できる。

とはいえ、その後も、デモは収束することはなく、筆者としては直前まで本当に香港を訪問できるのか、あるいは取りやめるべきかを迷っていた。

結局、香港貿易発展局の支援もあり、訪問を強行することにしたが、実際に香港国際空港に到着してわかったのは、確かに以前よりセキュリティーは少し厳しくなっていると感じたが、空港内もまた街中も、比較的平常で、いつもの香港らしい活気に満ちた日常の生活や活動がなされていたことに驚いた。

サミットは、香港島にある香港会議展覧センターで開催されたが、もちろん会場へ入場する際のセキュリティーチェックはある程度厳しく、金属物や傘などの持ち込み禁止はあったが、参加証のチェックなどは意外に淡々と進んでいる感じであった。

「一帯一路」と「大湾区」の関係

さて、この「一帯一路」香港サミットだが、背景にはもちろん、中国政府の「一帯一路構想(Belt and Road Initiative)」がある。これは、中国政府が形成をめざす経済・外交圏構想で、新たな経済圏の確立や関係各国間の相互理解の増進などを目的とする構想だ。


出典:「一帯一路とは何か?わかりやすく中国の経済構想を解説」黄耀和 ビジネス+IT 2018年5月28日

そして、同構想を推進する目的で、北京中央政府の主催で、2017年および2019年に「一帯一路 国際協力サミット・フォーラム(中国語:一帯一路国際合作高峰論壇)」が開催されている。今年は4月25日~26日に北京で開催された。同サミットには各国の首脳および首脳級のリーダーが参加しており、習近平国家主席も開会挨拶をしている。

「一帯一路」香港サミットは、その北京で開催されたサミット・フォーラムのスピンオフ的なものであり、香港特別行政区政府および香港貿易発展局が共催。今年で4回目の開催である。こちらのサミットには、より実務担当者に近い各国の関連部局の部長あるいは部長級代表、および商業界の代表が参加した。

本年のサミットは、主催者発表によれば、世界69カ国から、約5000名の政府高官や行政官、企業家や起業家、メディア関係者、専門家らが参加した。開場時における会場入り口付近の混雑がそれほどでなかったので、デモの影響で参加者が減ったのかと思ったが、会場内に入ると、やはり多くの参加者がおり、予想したよりも盛況であった。

また、オープニング・セッション、政策ダイアローグ・セッション、プレナリーセッション、テーマ別分科会、オープン・フォーラム、プロジェクト・ピッチセッションなど、240のプロジェクトに関する700を超える個別相談会(主催者発表)があり、人の出入りや動きも多く、それなりに賑わっていたように思う。
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文、写真=鈴木崇弘

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