「一帯一路」香港サミットで痛感した日本の存在感のなさ

DuKai photographer / Getty Images


他方、今回のサミットの会場外で聞いた話によれば、デモの問題もあり、香港人の間でも一帯一路構想や中国の香港・澳門(マカオ)および広東省の9都市を統合し、世界有数のベイエリアとして発展させるという「大湾区構想」への意見は分かれているそうだ。それは、香港の側には、歴史的な経緯から、中国本土や中国本土の人々への優越意識もあり、今も中国本土は遅れているので、そちらに巻き込まれたくないと考えている人間も多いからだという。

そのため多くの香港人は、基本的に中国本土に行きたがらないそうだ。そしてこのようなことも、実は香港のデモが続いていることの根底にはあるという。いずれにしても、今回のデモの問題は、単なる法律改正の問題など以上に根が深いところに要因があると感じた。

近年香港と大湾区の都市などの差が狭まっているということが言われる。それは確かに事実だろうが、いまだ香港は英語力や地理的条件を含め、大湾区ではその優位性はやはり抜きんでており、中国は、現状の一国二制度を今後も当面は維持、活用するのではないかということである。

現実に、現状維持のほうが、中国本土にとっても、香港の持つポテンシャルを活用でき、経済的にも人材的にも有利に進めることができると考えられるからである。

それというのも、デモ開始時から約半年も経っているにもかかわらず、対応を厳しくしてきている側面もあるが、過去の例と比較すれば、中国政府が全体としてはいまだ比較的冷静かつ柔軟に対応していることからも、そのことは判断できるだろう。

日本からの参加者はたったの50人

最後に述べておきたいことは、今回のサミットにおける日本の存在感の問題だ。日本人は、全参加者数5000人のうち、約50名に過ぎず、日本からのスピーカーはおらず、展示スペースもまったくなく、存在感は皆無に等しかった。


展示場の様子

「一帯一路構想」は、元々は米国を除いて、中国が新しい国際関係を構築していくための枠組みづくりの動きであり、同構想がカバーする地政学的エリアを考慮すれば、米国や親米国である韓国や日本などの存在感がないのは当然といえば当然であろう。だが、それはある意味で、現在の世界における日本の存在感のなさを物語っているといえなくもない。

会場にいた日本の人たち(メディアの人間も若干いたようであるが、同サミットについての日本での報道はほとんどないようだ)とも話す機会があった。サミット参加者はそれなりの問題意識はあるようだが、日本国内ではそれほど深い問題意識や危機感を持っている人は少ないといえる。

しかし、日本の今後を考えた場合、本サミットの動き等も含めた、中国の「一帯一路構想」や、それに関連した動きについてもより強い関心を持ち、その動きや方向性のなかで、日本がどういう活動や方向性をとるべきかについて、中長期的観点からも考えていかなければならないと、筆者は痛感したのだった。

文、写真=鈴木崇弘

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