「一帯一路」香港サミットで痛感した日本の存在感のなさ

DuKai photographer / Getty Images


また、同時並行して、「The first Belt and Road Week」も開催されていた。そのオープニング・セッションでは、林香港特別行政府長官が、香港という場所がいかに多くの長所や特徴を有しているかを述べ、一帯一路構想を推進していくうえで、どのように貢献できて、どれだけ重要であるかについて述べるとともに、また立場からすれば当然のことであるが、「香港の安定は回復されるという自信がある」と強く主張していた。

他のいくつかのセッションやイベントにも参加したが、ほとんどのパネラーやスピーカーからも、世代や国籍等に関わらず、いかに「一帯一路構想」と「大湾区構想」が結びついており、2つが相互補完的に重要であり、そこにおける香港の役割や重要性が大きく、それらは今後ますます増大するであろうという意見や考えが表明されていた。

筆者も、それらの表明を聴いて、いかに「一帯一路」と「大湾区」がつながっているかということを実感するとともに、香港の重要性も感じた。他方、ある意味で、今回のサミットは、それらの点を世界に発信し、理解してもらうための機会であり、それこそが主催者側の意図でもあると思った。

そして、それらのこととも連動するのだが、香港側としては、中国政府への存在感や一国二制度の堅持の重要性の意思表示であるとともに、間接的には中国政府からの一国二制度を今後も堅持していくということのアピールであるようにも感じた。

根強く残る香港人の優越意識

一帯一路構想については抽象的なものが強く、それほど進展していないという意見もある。また、同構想は、これまで途上国などを中心とした国々への中国によるインフラ建設を中心にすることで、同構想への参加国を増やしてきた。

しかし、中国の外貨準備が減少してきたために、2016年をピークにインフラ建設は減少してきており、今後もその可能性が高いため、中国政府は、費用が抑制でき、かつ効果の大きいと考えられる「デジタル・シルクロード(Digital Silk Road)」構想に重心を移しつつあるという意見もある。

このように一帯一路構想には、さまざまな意見があり、紆余曲折もあるようだが、今回の「一帯一路」香港サミットに参加した限りでは、中近東や欧州の国の巻き込みはまだ限定的であったり、参加国も偏っていたりするように感じる側面もあったが、全体で見れば、着々と海外の国を巻き込んできていることを実感できた。


地政学的リスクに関する分科会

またそのように各国や各地域を巻き込んでいくうえで、中国の人たちが長い歴史のなかで構築してきた華僑による華人ネットワークが活用されているとの印象も強く得た。このネットワークは、一帯一路構想の推進における基盤的インフラであるし、それがあるからこそ、同構想は単なるスローガンではないともいえる。
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文、写真=鈴木崇弘

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