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20年前の恩師と偶然再会し、自身の長年の研究成果を激賞される。おそらく、研究者にとっては無常の喜びであろうが、彼らは絶えず「次」に目を向ける。


その人は突如として現れた。私は反射的に席を立ち、その人を追いかけていた。「ジョバヌッチ教授、20年前、私はここハーバード公衆衛生大学院の学生で、先生から癌疫学研究の手法を習いました。お蔭様でビタミンDとガンの関係を示す論文をアメリカ医師会誌に発表することができました。お礼が言いたくて、声をかけさせていただきました」。

エドワード・ジョバヌッチ先生はハーバード公衆衛生大学院の教授であり、ビタミンDとガンの世界的権威でもある。私は名刺を渡しながら追加解析の結果についてもコメントをいただくべく、午後のアポイントを取り付けた。

例年、大学院生や医学生数名を連れボストンを訪れることにしている。ハーバード医学部巡礼の旅だ。若手に最先端の医療を感じてもらいたいからである。8月初旬、その日はハーバードに留学中の日本人医師の計らいにより生物統計学の授業を聴講し、カフェテリアでミーティングをしていた。その刹那、歳は60代、中肉中背で丸眼鏡をかけた教授が歩いている姿が目に入ったのだ。実は渡米前、教授に何度かメールを送ってはみたものの全く返事がなかった。しかし偶然にもこのような機会に恵まれ、不思議な廻り合わせを感じずにはいられない。

夏休み中の大学構内はとても静かだ。教授室の窓からは真っ青な青空を背景に赤レンガの街並みが遠くに見えていた。そんな中、たっぷり1時間、教授と一対一で討論できた。メールは便利だが、心の機微に触れることはできない。私がPCでプレゼンをすると、その図を食い入るように凝視し、重要なデータを指でなぞりながら「すばらしい」と一言。2010年、ビタミンDサプリメントがインフルエンザ予防に有効という論文を発表したときから教授は私の研究をウォッチしていたという。そして最後に教授は私に笑顔で質問した。

「What’s next?」

イラストレーション=ichiraku / 岡村亮太

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