ハリウッドスターたちが好む 環境に優しいクルマ

2010年のゴールデングローブ賞授賞式に登場したトム・ハンクス(Getty Images)

2010年のゴールデングローブ賞授賞式に登場したトム・ハンクス(Getty Images)

2003年、ハリウッドに新しい風が吹いた。アカデミー賞の授賞式の送迎車として、多くのスターがトヨタのプリウスを使うようになったのだ。

それまでは豪華なリムジンをはじめ、ヨーロッパやアメリカの高級車を使っていたが、彼らもやはり環境にやさしいイメージが欲しいのか、ハイブリッド車で授賞式のクルマ寄せに乗りつけた。

アカデミー賞最優秀男優賞を2度受賞したトム・ハンクス、「プリティ・ウーマン」で一躍有名になったジュリア・ロバーツ、「タイタニック」のレオナルド・ディカプリオ、「メリーに首ったけ」のキャメロン・ディアス、「ララ・ランド」のライアン・ゴズリング、「スパイダーマン3」のカースティン・ダンストなどは、授賞式に乗り付けただけではなく、みな実際にプリウスを所有している。



特にトム・ハンクスは、トヨタのクリーンなイメージを好むようだ。彼は世界初の市販ハイブリッドであるプリウスと、テスラ製のEVパワートレーンを搭載するトヨタRAV4を所有している。テスラといえば、「ジェイソン・ボーン」主演のマット・デイモンがテスラ・ロードスターに乗っている。

でも、プリウスとは正反対のクルマに乗っているスターもいる。ターミネーター・シリーズでお馴染みのアーノルド・シュワツェネッガーは大のハマー好き。四角い軍事的な形をしたどデカいSUVだ。

彼が生まれ育ったハンガリーでは、第二次世界大戦の直後に英国軍の戦車と大型トラックが多く走っていて、それらを見て育ったシュワちゃんは、18歳になると「こんな大型車のドライバーになりたい」と思うようになったという。だから、アメリカで有名になった時、ハマーのような大型車に夢中になった。「ハマーとかユニモグとかが最高ですよ」と彼は言う。



ハマーが1992年に登場した時、シュワちゃんはすぐさま購入し、ハマーの代表的なオーナーになった。でも、2003年から8年間カリフォルニア州の州知事を務めて環境に関心を持ったせいか、彼のハマーの一台は、ガソリンではなくEV仕様になっている。また、所有するもう一台のメルセデスベンツ・Gワーゲンも、なんと電気バージョン。ずっと共和党を支持してきたマッチョなシュワちゃんも、年をとれば、環境のことを大切にしようと思うわけだ。

そう、クルマにはそれに乗る人のパーソナリティを語るという役割がある。「まさにぴったり!」というオーナーとクルマの組み合わせがあれば、意外なコンビネーションもある。

実は、元ジェームズ・ボンド役のピアース・ブロスナンは、BMWのi8スーパーカーに乗っている。シャーリーズ・セロンは、レンジローバーに乗っていて、ビヨンセは、メルセデスSLRマクラーレン、メルセデスベンツSクラス、ロールスロイス・シルバークラウドIIを所有している。



トム・クルーズは、ポルシェ911と最高速度410km/hが出るブガッティ・ヴェイロンを、ジェニファー・ロペスはアストン・マーティンDB7を持っているそうだ。彼らがクルマをドライブしている姿を想像すると、それぞれのイメージや姿勢がよりはっきりと見えてくる。

トランプ政権がパリ協定から離脱し、オバマ元大統領が働きかけた厳しい排気ガス規則を緩めても、トム・ハンクスやディカプリオなど「意識が高い」系のスター、そしてシュワちゃんのようなマッチョな俳優も、アメリカが進むべき「地球温暖化」を食い止めるための一助となろうとするステイトメント(意思表明)を自分の車に込めているようだ。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

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