私はそれを「ビジネス・スマイル」と言っているのだが、いわゆる「営業スマイル」と呼ばれているような愛想笑いをすることではない。仕事の相手と、いち早く打ち解けたり、お互い言いたいことを伝えやすくするための笑顔だ。
詳細は職種によってケースバイケースとはなるが、基本は「始まり、途中経過、終わり」という3つのフェーズに分けて考えるとわかりやすい。
挨拶「前」から笑顔であれ
第一印象での笑顔は、とても大切だ。笑顔で迎えられて嫌な気持ちになる人は、まずいないだろう。笑顔は、相手の心にスムーズに入っていくための、助走のような役割なのだ。
初対面のときの笑顔として、まず気をつけたいことは、やる気が視覚化された「明るさ」だ。この笑顔は、口の形を「イー」を発音するときの形にするとよい。写真撮影のとき、よく「ハイ、チーズ」という掛け声でつくる、唇の端が左右に引き上げられた状態だ。
これで重要なのは、挨拶をする前には、すでにこの笑顔になっていることだ。笑った直後に「……はじめまして」とか「……こんにちは」、「……どうも」といった挨拶の言葉が続くとイメージすればよい。
会話中は「モナリザスマイル」で
相手の話を聞くときは、自分の口は開けないようにする。そうすれば、傾聴していることを相手にアピールできる。そして、話が佳境に入り、本格的な交渉を始めるときの笑顔は「柔らかい微笑み」が基本だ。難しい交渉になったりすると、表情も硬くなり、深刻なムードをつくってしまうことがあるからだ。
柔らかい微笑みは、口の端を軽く上にあげる。こうすると頬にほんのり膨らみが出て、穏やかな表情になる。イメージはレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」だ。微笑んではいるが、ほどよく謎めいていて、相手との関係をニュートラルな状態にしやすい。反対の意見を言うときでも、「なるほど、しかし……」とスムーズに切り返しやすくなるのだ。
注意点は、商談などが長時間にわたったとき、ずっと柔らかく笑っていると、かえって感情が伴っていないようにも見えるから注意しよう。同意するときはしっかりと頷き、相手の話に賛意を感じたときなどは、眉を上げたりすることなどを忘れないようにしたい。