NASAの飛行士が「宇宙からの不在者投票」に成功

アンドリュー・モーガン/Getty Images

NASAの宇宙飛行士のアンドリュー・モーガンは11月5日、地上から約400キロ上空を飛行中の国際宇宙ステーション(ISS)から、ペンシルバニア州で実施された地方選挙への投票を行った。彼の投票はNASAのスタッフと、ペンシルバニア州ローレンスの選挙管理委員会の協力で実現した。

モーガンは今年春の時点で、不在者投票の申請書類をEメールで送信し、投票日当日に地球低軌道をまわるISS内に居ると伝えていた。選挙管理委員会の担当者は当初、モーガンからのメールがいたずらだと思ったが、NASAからの電話を受けてそれが本物だと気づいたという。

投票のセキュリティを維持するため、ローレンス郡のIT部門は専用のEメールアドレスとパスワード、さらにPDFファイルで投票用紙を用意した。投票に際し、選挙管理委員会はまず、投票用紙をモーガンに送信した後、別のメールで彼だけが使えるパスワードを送信した。

現地メディアのNew Castle Newsによると、今回の投票システムの構築には1カ月を要したという。宇宙からの投票を終えたモーガンは担当者に対し、感謝のメッセージを送った。

テキサス州は1997年に宇宙飛行士による宇宙からの投票を認める法律を可決させており、法案の署名は当時のテキサス州知事のジョージ・W・ブッシュが行った。この法律がテキサス州で成立したのは、宇宙飛行士の大半がジョンソン宇宙センターがあるヒューストンで暮らしているからだ。

NASAの規定では、宇宙飛行士らはどの選挙に投票を行うかを、打ち上げの1年前に通知しておく必要がある。1997年に初めて宇宙からの投票を行ったデビッド・ウルフは2008年のNPRのインタビューで「それがどれだけ手間のかかることなのかは、分からないかもしれない。でも、地球から遠く離れた場所から投票を行うためには、ちょっとしたことがとても大切になる」と述べていた。

ウルフは当時、ロシアの宇宙ステーション「ミール」から投票を行っていた。

2020年の大統領選挙を控え、米国では特定のグループの人々の投票を阻止する「ボーター・サプレッション(投票妨害)」の問題が懸念されている。しかし、この問題はまだ大統領選挙討論会の議題とはなっていない。

編集=上田裕資

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