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2019.11.09

単なる役得ではない 米企業幹部の強欲に寄り添う「Perks」の実態

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たとえば役職者が出張をするとき、混雑した飛行場のロビーに着き、専用の航空会社の専用ラウンジに行って出発前にコーヒーを楽しみながら静かな時間をすごす。ラウンジそのものが大事なのでなく、「おれは役職者だ」と感じられるようなものすべてがPerksになる。

そんなものはくだらないと思う日本の経営者も多いかもしれない。しかし、報酬額がどんどんつり上がってくると、Perksで役員の強欲に寄り添うという考慮なくしては、いい人材を得られないというのがアメリカの実情だ。

「カー・アローアンス」という制度も実に定着している。役職者がオンボロのクルマでトップ営業にいかれては困るので、それなりのクルマを買って維持してもらえるように会社が自動車代を支給する制度だ。これは月に10万円を超えることもあるので、交通費とは呼べず、税法上も所得税の対象となる。だからPerksなのだ。


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このほか、法人契約の野球観戦チケットやら休暇の翌年持ち越し、法人クレジットカードのマイレージを利用した役職者だけの座席のアップグレードのルールなど、Perksは枚挙にいとまがない。

アメリカに住む日本の駐在員の質素な暮らしぶりに比べ、広尾や麻布あたりに住むアメリカ人のゴージャスな生活ぶりとのアンバランスは、まさに住居用のマンションがPerksなのだ。

そして、Perksなしでは彼らエグゼクティブは日本に留まらないと考えるのが正しい。そこには日本には珍しいビルトインの大型食器洗浄器や、秋葉原でも売っていないGE製の超大型冷蔵庫など、これまたPerksに囲まれている。

ところがやっかいなことに、「交渉はなんでもストレートに」と思われがちなアメリカ人だが、Perksをめぐって会社と役職者が「交渉」することはまれだ。観戦チケットや冷蔵庫のことで、会社と交渉するのは企業人として恥だという意識が確実にある。

従って、会社のほうが積極的にPerksを慮って用意してやり、「そっと差し出す」というやり方が求められる。金でないぶん、実にやりにくいのだ。
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文=長野慶太

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