人生100年時代、就職か起業か。改めて安定の意味を問う

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あなたはどちらの「安定」を重視するか

「security」と「stability」、どちらが良いということではない。大事なのは「安定」には2種類あると知ったうえで、人生のコントロールの主導権を自分自身が持つのか、それとも他人に預けるのか、そのバランスを考えることだ。自分の優先順位はどちらなのかを意識し、そのための選択をしていくことである。

例えば、「security」なんかクソくらえとばかりに、新卒でインターン経験もないまま起業するなどというのは現実的ではない。

自分のやりたいことや、興味がはっきりしている場合は例外として、自分自身が、知識も経験も未熟だと思う場合は、むしろ、しっかりとした組織に入り、ビジネスの基礎や仕組みを学びつつ、その環境で全力を尽くしてみるという経験をすることは賢い選択であると思う。大企業に入るという選択そのものが「security志向」というわけではないのだ。

問題は、「大企業に入社したから安泰だ」という「入社ゴール意識」である。若い世代にはもはやそうした意識はないものと思いたいが、知人の大学教授や、インターンを迎え入れた経験を持つベンチャー企業代表などに聞くとそうでもないらしい。
 
「あのゼミに入れば」「インターンに行けば」就職に有利になる、すなわち大企業に入れる可能性が高まるという学生たちの声がよく聞かれると言うのだ。自分は「stability」重視と思っていても、大企業への内定や転職が決まった途端にゴールテープを切ったと錯覚し、「security」重視に切り替わってしまうことも多いようである。

「入社ゴール意識」を持ったままだと、意識するしないに関わらず、所属する組織の中だけで通用するスキルや処世術を優先的に身につけていく。そして何年も経って、そこそこの「security」はあるが「stability」がないことに気づき愕然とする、という事態が起こるのだ。そのとき慌てても、外で通用するスキルなり経験なりがなければ身動きが取れない。

そして、盤石と思われていた「security」さえ、いつ崩れるともわからない脆いものとなっている。名だたる大企業である東芝やシャープの経営危機、そして経団連会長やトヨタ自動車の社長が「終身雇用はもう守れない」と発言したことは記憶に新しい。「入社ゴール意識」を漫然と持ち続けていたら、今やどちらの「安定」も失いかねないのだ。

「人生100年時代」と言われる昨今、より長い人生を二毛作、三毛作で考える時代となってきている。直線的なキャリアでは、もはや「security」「stability」どちらの安定も得にくくなっていく可能性が高い。

自分がどんな未来を得たいのかを早い段階から考え、趣味やボランティア、さらに進んで副業・複業や週末起業などで人生のオプションを広げていき、「security」と「stability」のバランスをとる試みを続けていくことを勧めたい。

理想の人生への舵取りはとても難しいものだ。そんな中で「security」と「stability」という2つの軸を意識することは、自らの内に羅針盤を持つことにほかならない。

文=岩田真一

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