一方で反対派らは、消費者の選択肢が減少し価格上昇につながると指摘し、合併阻止を求め複数の州が訴訟を起こしている。2社が統合を完了するためにはこの訴訟に勝つ必要がある。
FCCは合併の承認にあたり、スプリントとTモバイルらが3年以内に米国の97%で5Gサービスを導入することを条件とした。この5Gネットワークは3年以内に、米国の過疎地の人々の85%がリーチ可能になりことを求められている。
FCCはさらに、2社に対し合併後の3年間は料金の引き上げを行わないことを条件とした。これらの条件を満たせない場合、合併によって誕生する企業は最大20億ドルの罰金を米国政府に支払うことになる。
2社の合併は今年7月に米司法省の反トラスト規制当局によって承認されていたが、いくつかの前提条件が加えられていた。前提条件には、スプリントが2009年に買収した「ヴァージン・モバイル」や、プリペイドサービスの「ブースト・モバイル」を衛星放送サービスの「ディッシュ・ネットワーク」に売却することが定められていた。
さらに、Tモバイルとスプリントらが今後、ディッシュに対し携帯基地局へのアクセス権を与え、ディッシュ独自の5Gネットワーク構築を支援することを求めていた。
FCCのパイ委員長は声明で次のように述べた。「今回の合併により、米国の通信大手企業が4社から3社に減少するため、競争が阻害されるという反論もあがっている。しかし、この見方は現実を正しく捉えていない」
5G時代の到来を控えTモバイルとスプリントは、AT&Tやベライゾンと戦う上で、2社がリソースを共有することが必須だと述べている。スプリントとTモバイルは、共にソフトバンク傘下の企業であり、この2社は合併により、競争上の優位性を獲得することになる。
一方で、消費者団体や民主党議員らは、2社の合併により米国の大手通信企業が4社から3社に減った場合、料金の値上げが起こり、消費者に不利益をもたらすことを懸念している。FCCと司法省は、それらの反対意見を抑えるために、衛星放送サービスのディッシュを第4のキャリアとして浮上させたい考えだ。
しかし、この案に関しても反論はやんでいない。NPO団体のPublic Knowledgeは声明で「2社の合併が料金の値上げにつながることは必須であり、通信業界のイノベーションを阻害し、クオリティの低いサービスを消費者に押しつけることになる」と述べた。
Tモバイルとスプリントの合併に向けての歩みは、司法省とFCCの承認という2つの大きなハードルを乗り越えた。しかし、ニューヨークを中心とした各州の司法長官らは、この合併が独占禁止法に違反するとして、訴訟を起こしている。