東京大学の出身者は、なぜ卒業後に実社会で伸び悩むのか

東京大学 / Getty Images

東京への一極集中、そして地方の衰退が叫ばれて久しい。大学に関しても例外ではない。2017年度、わが国には780校の大学が存在したが、うち138校(18%)は東京にあった。

学生数がもっとも多いのは日本大学で6万7933人。早稲田大学が4万1965人、近畿大学の3万3125人と続く。とはいえ、学生数トップ10のうち7校が東京にある。東京には規模の大きな大学が多く、全国の大学生のうち、26%が東京の大学に通っている。

大学は基本的に「地産地消」だ。入学者の大半は地元出身者が占める。全国から優秀な学生が集まると考えられている東京大学ですら例外ではない。2019年の東京大学の入試では合格者の59%が関東出身だった。早稲田大学、慶応大学にいたっては、ともに78%が関東出身だった。

また、東京大学の高校別合格者ランキングのトップ10のうち、5校が東京の高校だ。首都圏に拡げると8校となる。首都圏以外の高校でランクインしているのは灘高(兵庫県)と久留米大附設高校(福岡県)だけだ。

東大出身のノーベル賞受賞者はわずか4人

では、東京出身で東京大学などの一流大学を卒業した人のその後はどうなっているだろうか。私は、伸び悩む人が多いと思っている。もちろん、出身大学が出世に影響する役所や大企業では、東京大学などの名門大卒は、やはり強い。これは医学界も例外ではない。

日本専門医機構という組織がある。専門医資格の付与だけでなく、「若手医師の都市部集中を是正するため」という名目で、研修医療機関を規制する組織で、医師不足の昨今、医師の配置を統制できるのだから、絶大な権限を有する。

この組織の役員27人中、24人が医師だが、15人が首都圏の大学を卒業している。うち7人が東京大学の出身で、4人は東京の進学校から東京大学医学部に進んでいる。

全国の大学には81の医学部が存在するが、このうち首都圏に存在するのは19(23%)だ。首都圏の大学出身者は、それ以外の地域と比較して、5.4倍も日本専門医機構の役員になりやすいことになる。東大にいたっては33倍だ。

彼らが優秀で仕事ができるのなら、それでいい。ところが実態は違う。東京大学医学部の卒業生は「頭は良いが、仕事はできない人間が多い」と私は感じることが多い。

医学の世界では、「実力の評価」は比較的容易だ。なぜなら、医学界で評価されるには、英語で論文を発表しなければならず、医学論文の世界では確立された評価基準があるからだ。

その最たるものがノーベル生理学・医学賞だ。わが国からは、過去4人が受賞しているが、東大医学部の出身者はいない。余談だが、この現象は医学だけに限らない。自然科学系で過去に20人がノーベル賞を受賞しているが、東京大学出身者はわずかに4人だ。京大の7人に遠く及ばない。
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文、写真=上 昌広

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