ライフスタイル

2019.11.11 07:00

質より量の時代の終わり そろそろ「忙しい」の見直しを

(左から)小林孝徳、松嶋啓介、原田 朋

働き方改革が進むにつれ、仕事のデキるデキないを表すワードとして「生産性」が注目されるようになった。すると書店のビジネスコーナーには、生産性を高めるためにどんな生活をすればいいか、という書籍が並ぶようになった。意識の高い層は今、ライフスタイルへの関心が高まっている。

ライフスタイルはもちろん、仕事も仕事以外の時間も含めたものだ。つまり、どう生き、どう仕事をするか。その中で重要な役割を占めるのが「食」と「睡眠」だというのに異論がある人はいないだろう。食べなくても寝なくても生きてはいけない。そして両者は密接に関わり合っている。

ではどんな食事と、どんな睡眠がいいのか。ニースと東京を行き来しながら食の重要性を説くシェフの松嶋啓介と睡眠スタートアップ「ニューロスペース」CEOの小林孝徳が対談。今の日本に潜む課題の本質に触れながら、全3回にわたり、個人と企業と社会に向け、現状打開のヒントを提案する。

モデレータは、両者と親交のあるスタートアップスタジオquantumと博報堂でクリエイティブディレクターを務める、原田 朋。第1回は、当たり前になっている「忙しい」の見直しについて。


原田:松嶋さんは日仏で大手企業と協業していたり、経営者や起業家ともからよく相談を受けたりすると思いますが、そうした中で最近感じていることはありますか?

松嶋:日本とフランスを見比べると、仕事をしている人たちが、圧倒的に違いますね。オンとオフの切り替えがフランス人は圧倒的にうまい。

ものすごく働くフランス人もいるけれど、そういう人はどこかでバカンスをうまくとっている。月単位でうまくやる人もいれば、平日バリバリ働いて土日を完全に休むみたいにバランスをとる人もいる。または、朝早くから仕事するけど17時以降は絶対に仕事しない、みたいな人も。とにかくみんな、オンとオフがはっきりしている。



フランスは「仕事をする人」、日本は「ビジネスマン」って感じでしょうか。ビジネスのスペルは「business」より「busyness」がしっくりきますね。自分でビジーに追い込んで、自らをビジネスマンだと言い聞かせ、食事や睡眠もビジーだからしょうがない、という発想になっている。終わってるな、と思います。

小林:時代的背景もありますよね。高度成長期は、時間をかければかけるほど、睡眠時間を削って働けば働くほど、生産性は上がると言う考え方だった。そこで成果をあげてきた人がいま企業で重役について、自分の成功パターンを振りかざしたりしている。

悪気はないのかもしれないけれど、彼らが会社の上層部にいることで、寝ないで仕事をすることが美徳みたいな風潮が会社に蔓延してしまう。時には眠そうな顔をするだけで怒られることもあると聞いて、時代的背景を感じています。

ただ、最近は変わってきて、どれだけ短い時間で生産性を高く、かつクリエイティブであるかが求められつつもある。するとやはり、睡眠が重要になる。心の安定や頭の整理ができてこそ、余裕を持って決断できるようになると思う。
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編集=鈴木奈央 写真=山田大輔

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