小林:先ほど、肉体労働から脳の労働に変わったという話がありましたが、それは睡眠を考える上でも重要なこと。昼間に運動した時や体が疲れた時の睡眠は質が良い。でも、デスクワークで脳が疲れたとか、精神的な疲労が溜まっている時は質が悪くなる。睡眠も時代によって質が変わってきています。
松嶋:産業革命後に世界は大きく資本主義に向かっていき、その社会の中で労働者に忠実に働いてもらう、常習的に仕事をしてもらうには、脳をコントロールする必要があった。そこで、サラリー=給料です。報酬を与えることでコントロールしたのです。
実は、そのサラリーの語源である「塩(サラリウム)」も、同じく産業革命の工業化で簡単に精製されるようになりました。砂糖もです。僕が考えるに、給料はお塩、ボーナスは砂糖。どちらも、脳を喜ばせる報酬です。
原田:すると、夜にチョコレートに手を伸ばすのは、寝ようとしてる脳にボーナスをちょいちょい与えて、逆に活性化させちゃうみたいな感じになりますね……(苦笑)。
松嶋:つまり、資本主義において、サラリーとボーナスで労働者をコントロールするのは楽だったんです。ところが時代がかわり、テクノロジーやAIによって人から“労働”が薄れていっているのに、その昔、体が疲れる時代に使っていた塩と砂糖がそのまま残っている。それが今の食と社会の問題です。
だから、抜いちゃっていいじゃんって話なんですよ。それよりも「人間の想像力を豊かにできる味付けのもの」を食べていくことが、この先必要だと思いますよ。
原田:そうした社会の変化のひとつに、一人暮らしの増加もあると思います。特に都市では、独身のビジネスパーソンも多い。こうした暮らしの変化も「食」に影響はあるのでしょうか?
松嶋:一人暮らしだと自分で作るのはめんどくさくなりますよね。そして外食だと味が濃い。先ほど出た脳を癒す(騙す)食事になりがちです。
家族がいると、気をきかせて、食後のフルーツとかがなんとなく用意されてる。でも一人だと、フルーツは皮をむくのすらめんどくさい。その結果甘いものの代替としてお菓子に手が伸びる。でもフルーツとお菓子では糖の質が違うから、脳に誤解を与え、疲弊してしまう。
フルーツで優しく糖を吸収するのと、精製されたグラニュー糖を瞬間的に摂取するのとでは大きく違う。そんな時にドラマを観て興奮した状態で床につく。寝れるわけないよね。
小林:そして寝れないから、「布団が悪いのかな」とか考えて、枕とか寝具をかえるんですよね。自分の行動を見直さずに。
原田:僕の友人に、もはや趣味かのように枕を買い換える人がいます。それは、問題をお金で解決しようとしてるのかもしれなくて。この枕を買ったから寝れるべきだ、みたいに思ってなければいいなあと。第2回記事(11月18日公開)は、そのあたりを掘り下げていきます。