質より量の時代の終わり そろそろ「忙しい」の見直しを

(左から)小林孝徳、松嶋啓介、原田 朋


原田:そうして追われる日々だと、ビジネスパーソンの食はどうなってしまうのでしょうか。忙しさと食は関係ありますか?

松嶋:忙しい人は忙しいものを食べますね。例えば、慌ただしく作ったもの。なぜなら、作る人も慌ただしくなっているから。その代表的なのがファストフードです。

生産性には、「質」を上げるものと「量」を上げるものの2種類がある。ビジネスマンは生産性の高いものを食べたいと思ってるけど、彼らは「量」の生産性に着目したものを食べてることが多い。例えばチェーン店のハンバーガーは、わかりやすく「量」を求めていて、作るのに時間をかけていない。

実は、海外ではヘルシーと言われがちな寿司も、シャリをギュッと握って、ワサビを入れてネタを載せて……目の前に出てくる一つの握りにかかっているのは15秒くらい。それを15秒で食べきっちゃう。そう考えるとファストフードだよね。

その点、例えば専門店のハンバーガーや下ごしらえをしっかりしている寿司は、手間をかけ「質」が上がっている。でもその「質」は、「美味しい!」と瞬時に脳を癒すけれど、体を癒してはくれない。そういうものを求めてしまうのは、肉体労働など体力的に疲れることが多かった昔に比べ、現在はデスクワークで「脳」が疲れる仕事が多いから。今の人は必然的に「脳を癒すもの」を求めがちです。



原田:脳を癒す食べ物に共通する特徴はなんでしょう?

松嶋:砂糖、塩、油(脂)。いわゆる、休憩時間に瞬間的に摂取できるものです。それらは脳を癒すというか、騙しているだけに過ぎないんだけど。ビジネスマンにはビジーな料理を食べさせなきゃいけないのか、自らそういうものを選んで食べているのか、この問題はちゃんと考えなきゃいけない。

でも、みんなどれだけ忙しいのか、食への意識が低いだけなのか、コンビニのお弁当や社食でパック詰にされてるものを、デスクワークや会議をしながら摂取している。ランチの時もプライベートの話はせずに、仕事の話をしながら。食事でなく、食餌ですね。何やってんだ、って感じです。

原田:たしかに、時間をかけずに調理されたものを時間をかけずに食べてる人が多いですよね。睡眠についても同じく、忙しくしているのでしょうか?

小林:そうですね。いまの食の話は、そのまま睡眠にもつながります。寝る前の食事の内容、量、タイミングが、体内時計を狂わせたりするからです。たくさん寝ても、昼間や寝る前の過ごし方が悪いと睡眠の質が悪くなる。睡眠の質の低下は、勤務中のパフォーマンスの低下につながり、仕事が終わらない→残業する→睡眠時間が減る、みたいな悪循環に陥ってしまう。
次ページ > それは「布団が悪い」のか?

編集=鈴木奈央 写真=山田大輔

ForbesBrandVoice

人気記事