ビジネス

2019.11.08

スタートアップからスケールアップへ、VCが注目するイスラエルの現状

Getty Images


こうしたイスラエルの現状をふまえて、最前線に立つ3者はどう見ているのか。最後にそれを記しておきたい。

補完的な関係から、共創的な関係へ

2014年5月のネタニヤフ首相の訪日、そして翌1月の安倍首相によるイスラエル訪問をきっかけとして、日本企業のイスラエルへの関心は非常に高まりました。2013年には25社だったイスラエルへの日系進出企業は、2018年には71社に達し、5年で約3倍となっています。

他方で、安全面へのイメージや、かつてのアラブ諸国との軋轢の影響もあってか、日本企業のイスラエルにおける活動は、欧米の企業に比べて慎重なように感じます。しかし、「Scale-Up Nation」へ変化を遂げようとしているイスラエルにあって、ゼロからの創造を得意とするイスラエル企業とスケールアップを得意とする日本企業とは補完的な関係を築くことができ、日本への期待はこれまで以上に高まっています。

日本企業の中には、投資、とくに海外企業への投資に不慣れなところもあろうかと思いますが、スタートアップのみならず、科学技術力の高さにも見るべきものがありますので、イスラエルに研究拠点を置いて腰を据えて研究をしたり、イスラエルの大学と共同研究を行ったりといった活用の仕方もあります。

イノベーションは異なるもの衝突や融合から生まれると言われます。ハイリスクテーカーであり、人と違う考えをよしとするイスラエルの人たちは、日本人と真逆の文化を有しているとも考えられ、だからこそ日本とイスラエルがコラボレーションすれば、まったくこれまでにはなかったものが創り出せるのではないでしょうか。

来年3月からは、日本からイスラエルへ定期直行便が運航を開始します。是非一度イスラエルを訪れ、どのようにこの国を活用していくのか検討していただきたい。補完的な関係から、共創的な関係へ、日本とイスラエルの経済関係の深化を期待しています(在イスラエル日本国大使館経済担当書記官 栗田宗樹氏)

可能性は測りしれない


写真提供:Silicon Valley Ventures

2014年9月に、東京のイスラエル大使館で経済担当公使としての地位に就き、イスラエルと日本の貿易関係の開始と維持を担当して以来、ビジネス関係は劇的に変化しました。2014年から2018年の間には50億ドル以上に達するイスラエルのスタートアップへの日本企業からの投資がありました。

我々は経済を補完し得るパートナーです。日本企業はグローバルリーダーであり、技術力に基づいて高品質の製品を生産しています。一方、主にスタートアップであるイスラエル企業は、あらゆるビジネスを次のレベルに推進できる画期的で革新的なソリューションを提供しています。

現在、日本はグローバルな競争力を強化しようとしており、イスラエルは革新の拠点、スタートアップ大国または第二のシリコンバレーとも考えられており、まさに完璧な組み合わせです。イスラエルと日本の間のさらなる経済協力でもたらされる可能性は測りしれません。(イスラエル大使館経済部公使 ノア・アッシャー氏)
次ページ > まずは雰囲気を感じるところから

文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

ForbesBrandVoice

人気記事