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イノベーション・エコシステムの内側


スタートアップへの投資状況

イスラエルのVCコミュニティの始まりとなった政府主導のヨズマ・プロジェクトは、10社のイスラエルを拠点とするVCに投資をして、ROI(費用対効果)のリスクを共有し、VCの活動を奨励したものだ。

現在は、90社を超える国内VCはもちろんのこと、シリコンバレーからも多くのVCがイスラエルのスタートアップに投資している。

ちなみに、2018年におけるイスラエルのスタートアップの資金調達は、623件、合わせて約64億ドルだったが、今年はそれを上回る勢いだ(上半期で254件、約39億ドル)。

最近の傾向としては、1件当たりの調達額は増加しているが、投資件数自体は減少している(スタートアップの起業自体が2016年1122件、2017年861件、2018年356件と大幅に減っている)。

現在イスラエルでは「Startup NationからScale-up Nationへ」というスローガンが掲げられており、政府も自国でのPOC(実証実験)を推進するなど(これまでは海外でPOCを行うのが主流だった)、こうした流れを後押ししている。

成長分野と今後の課題

この国で伸びているのは、まず、サイバー、ヘルスケア、モビリティの3分野である。日本政府もサイバーセキュリティの分野で経済産業省及び総務省が、デジタルヘルスの分野では経済産業省がイスラエル政府とMOUを結んでいる。加えて、最近では、フィンテック、アグリ・フードテックも盛んである。

イスラエルにはそもそも大企業がほとんどなく、優秀な若者にとっては、自ら起業をするか、スタートアップで働くか、海外の大企業で働くかという選択肢は限られてくる。

ただし、現在では、GAFAをはじめとして300を超える多国籍企業がイスラエルに拠点を置いており、エンジニアやデータサイエンティストはそこに就職することで、リスクをおかさずに高額な報酬を得ることができる。前述した起業数減少の原因の一端はここにあるようで、イスラエルが今後もスタートアップ大国であり続けることができるか、その動向には注視が必要だ。

シリコンバレーと同じくイスラエルにおいても、エンジニア不足、給料高騰が起きている。ギフテッド教育を受ける才能ある学生は、高校卒業時には優秀なエンジニアとして即戦力となるため、高校生への採用活動も行われている。

このような若者は、サイバー精鋭部隊の8200部隊に入隊する前から、優秀なイスラエルスタートアップ等で勤務し始め、兵役中も国防軍での業務後の夜にスタートアップで働くというタフさがある。

アマゾンなどがエンジニアを惹きつけるために高額の報酬(3000万円以上)を提示したことが最近話題となったが、イスラエルのスタートアップもこれに負けない程度の金額(2000万円以上+ストックオプション等)を提示しており、日本のエンジニアの労働環境とは大きく異なっている。

文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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