南部氏は、2011年、還暦で「2型糖尿病」を発症。それに伴い腎機能が低下し末期腎不全に至った。末期腎不全の治療法は、人工透析か腎移植の二択とされており、そのうち、根本的治療法とされるのが腎移植だ。
電撃ネットワークは、過激な肉体芸で知られる。猛毒サソリを口の中に放り込んだり、瞬間接着剤を両手に塗りたくる芸で、客の度肝を抜いてきた。生きたピラニアを飲み込み、ちょっとしたハプニングで胃を食いちぎられる激痛に耐えたのは、南部氏の武勇伝だ。そうした過激なパフォーマンスは日本よりむしろ海外で受け入れられた。
海外進出のきっかけを作ったのは、あのデーブ・スペクター氏。デーブ氏の計らいで海外に拠点を移すと、理屈なしに笑えると人気に火がついた。「言葉の壁」は感じなかったという。早口の日本語でまくしたて、「FUJIYAMA!TOYOTA!GEISHA!」と叫べば、地元の観客は手を叩いて笑った。
全盛期の電撃ネットワークが、どれほど勢いがあったか。世界的VIPの待遇で、ニューヨーク、フランス、イタリア、ドイツ、エルサレムなどから出演オファーが相次ぎ、デンマーク女王の前で、お尻をむき出しにして「サボテンをケツで割る芸」を披露したこともある。
しかし、長年の過激パフォーマンスと、それに伴う生活習慣の乱れは、体に負荷を与えたようで……。
2011年、還暦を迎えた南部氏を襲ったのは、「2型糖尿病」。遺伝的な要因に加え、飲み過ぎ・食べ過ぎなどの生活習慣が影響し発症する病だ。糖尿病からくる腎機能低下も無視できなかった。
死を意識した時期もあったという。しかし平成の終わりが近づくにつれ、一筋の光を見る。
妻の由紀さんが、「私の腎臓を受け取ってほしい」と申し出てくれたのだ。
「うちのカミさん、すごいマメな人で」
9月某日。南部氏の活動拠点、東京・渋谷のカフェで待ち合わせた。
時間通りに現れたのは、物腰のやわらかい男性だ。“芸能人きっての変人”という異名をもつ南部虎弾のイメージとは異なるように見える。ステージをおりれば穏やかな人柄なのだろう。
挨拶もそこそこに取材がはじまった。自身でリメイクしたと言う個性的なリュックから、著者が過去に執筆した新聞記事を取り出す南部氏。誌面中央の写真を指差して「これは、東京女子医大病院の透析センターですね。僕もたった4回だけどお世話になりました。なかなか素敵な空間で気に入ってます」と話口調は丁寧だ。