長身の彼が動くと、ユラリ、と周囲の空気も一緒に揺らぐ気がした。
1993年に「Are You Gonna Go My Way(邦題:自由への疾走)」で世界的ヒットを放った伝説のロックスター、レニー・クラヴィッツ。デビュー後、30年を迎えた現在は音楽活動に加えて、インテリアデザイナーやプロデューサーとしても活躍し、その活動の場を拡げている。
昨年は、自身愛してやまないという世界最高峰のシャンパーニュ「ドン ペリニヨン」のためにキャンペーン写真を自ら撮影し、今年は自らデザインしたコラボレーションボトルも発売された。「ドン ペリニヨン」のクリエイティブ・ディレクターを務めるレニーに、その魅力について聞いた。
レニー・クラヴィッツ◎ミュージシャン、デザイナー。1964年、NYに生まれ、LAで育つ。89年にミュージシャンとしてデビュー後、91年に発表した2枚目のアルバム「Mama said」でブレイク。98~01年4年連続でグラミー賞におけるベスト・ロックボーカル・パフォーマンスを受賞。日本では「Are You Gonna Go My Way」がTVCMで使われるなど大ヒットした。Forbes(以下F):「ドン ペリニヨン」とはどんな風に出会いましたか? またその魅力とはなんでしょう?
Lenny Kravitz(以下LK):初めて飲んだのはまだハイスクールに通っていたころ。高級なシャンパーニュであることは知っていましたが、それ以上の知識はもっていませんでした。ただ、スゴいものを飲んでいるなと思ったのは憶えています。
で、3年ほど前、縁があって、「ドン ペリニヨン」誕生の地であるエペルネ村(仏シャンパーニュ地方)を訪れた際、強烈なセンセーションを覚えたんです。地下のカーヴやブドウ畑を見せてもらいました。ブドウという自然の恵みを芸術の域まで高めていく人間の叡智、歴史の重みを目の当たりにしたことが、ぼくの「ドン ペリニヨン」へ対するリスペクトをより深いものにしました。
F:前醸造最高責任者であるリシャール・ジェフロワさんと意気統合したとか?
LK:そうですね。リシャールのAuthenticity(真なるもの)へのこだわりにはぼくも共感します。これまで何度も食事をともにしましたが、いつもワインやシャンパーニュの話をしているわけではなくて、アートやビジネスの話まで……ぼくらは「ドン ペリニヨン」のおかげでコネクトする(つながる)ことができました。
F:つながりといえば、昨年あなたのデザインした邸宅で撮影されたキャンペーン写真でも、多くの人がコネクトしていました。スーザン・サランドンやハーヴェイ・カイテルなどハリウッドでおなじみの人から、アレキサンダー・ワン(デザイナー)や、中田英寿など…‥彼らはほとんど初対面だと思いますが、長年の知己のようにくつろいでいますね。
LK:それは「ドン ペリニヨン」があるから(笑)。真面目な話、ぼくは「ドン ペリニヨン」により人と人がつながっていく様を表現したいと考えていました。このときも実際は116人ものゲストを招待して、実際にパーティを楽しんでもらったものなんです。
伝統的な金細工の手法を使いボトルラベルの表面に槌打ちしたメタルを貼り付けることでアイコニックなラベルをデザインした。「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2008 限定品 BY レニー・クラヴィッツ ボックス付き」25,900円(税別)、「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2006 限定品 BY レニー・クラヴィッツ ボックス付き」43,400円(税別)F:今回のコラボレーションは写真だけではなく、あなたが自らデザインしたボトルもありました。キラキラと光るグラマラスなエチケットが印象的ですが、このインスピレーションはどこから?
LK:キャンドルの灯りです。ほら、キャンドルの灯りって神秘的ですてきでしょう? ぼくは自宅では夜になってもほぼ電灯はつけません。95%くらいキャンドルの灯りで過ごしています。ゆらめく炎がこのボトルのラベルに反射して、想像力をかきたてられるでしょう?
そしていま、このぼくらが囲んでいるテーブルもクラヴィッツ・デザインスタジオで造ったんですよ。中心にドン ペリニヨンを冷やせる大きなワインクーラーが内臓されている円卓で、これを囲んで、人と人がまたつながっていけたらよいな、と。互いにインスパイアし、インスパイアされる時間こそ、何にも代えがたい贅沢な経験。それがドン ペリニヨンの魅力につながると考えています。
<インタビューを終えて>
正味二日という短い日本での滞在中、「時間があればヌードルが食べたい」というので、愚問とは知りつつも、「ヌードルって日本そば? それともラーメン?」と聞いてみた。すると、サングラスの奥の瞳を少し大きく見開いて、「もちろんSobaだよ」と答えてくれたレニー・クラヴィッツ。ロックスターのオーラをまとったまま、またユラリと空気を震わせて立ち上がり、インタビュー会場をあとにした。
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