リスクとリターン。家庭における金融教育で絶対に教えるべきこと

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自分ならどうするか?と考えさせることも効果的

詐欺から身を守るためには、リスクとリターンの概念をしっかりと身に付け、低リスク・高リターンという都合のいいものは基本的には存在しないということまで理解すれば、まずそう簡単に詐欺にひっかかることはなくなるだろう。

大人からすれば当然のことかもしれないが、子どもにこの本質を理解させるのは難しい。言葉としてではなく、概念を覚えさせるには、自分ならどうするか、と考えさせながら話すことも重要であろう。

たとえば、Aという町では1個100円で売っている果物が、隣町のBでは1個500円で売っているとする。この果物はAではたくさん採れるが、Bではなかなか採れないからという設定でいいだろう。

それでは、いま自分がAで果物を売っているとしたら、何を考えるだろうか?当然、Bに出向いて果物を売ることを考えるだろう。なぜなら、売る場所を変えるだけで5倍の値段で売れるからだ。まさに低リスク・高リターンである。基本的には存在しないはずの低リスク・高リターンが存在した。

しかし、仮に自分がBで果物を売ることで美味しい思いをしているとほかの人が知ったら、何が起きるだろうか。続々とAからBに果物を売る人が増えていくだろう。すると、何が起きるのか。Bではその果物が珍しくなくなり、値段がどんどん下がっていく。

一方で、Aでは果物が少なくなっていき、少しずつ値段が上がっていく。そして、結果的には2つの町では値段が変わらなくなり、低リスク・高リターンは存在しなくなってしまった。

つまり、低リスク・高リターンは瞬間的に存在する可能性はあるものの、それがずっと続くことはなく、自分のもとにそのような話が来るときというのは、すでに詐欺事案になっていることがほとんどなのだ。

踏み込んだ議論もしてみよう

子どもが中学生以上の場合は、もう少し踏み込んだ議論をしていいかもしれない。

これまで述べてきたように、基本的には低リスク・高リターンは存在しない。しかし、実はビジネスの世界では低リスク・高リターンを維持し続けている人もいる。それは、コストを極限まで抑え、仕組みを作っている人だ。その仕組みを利用したり、乗っかったりしている人は低リスク・高リターンを享受できない。つまり、低リスク・高リターンは本当に限られた一部の人だけが享受できるのだ。

これから日本は格差が広がっていく。そうすると、これまで以上に一部の人だけが豊かになっていく。

それでは、何をすれば自分が仕組みを作る側にまわれるのか。

ネットやスマホが普及した現代では、アイディアひとつで世界を変えることができる。子どもと一緒に新しいビジネスモデルを話し合ってみるのも金融教育になるだろう。事業を起こし、それを運営していくためにはお金が必要だからだ。金融教育を投資や資産運用だけに限定せず、もっと幅広い視野でとらえて、ぜひ家庭でも実践していって欲しい。

連載:0歳からの「お金の話」
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文=森永康平

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