リスクとリターン。家庭における金融教育で絶対に教えるべきこと

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ここ数カ月は「金融教育の必要性」というテーマで話をさせていただく機会が非常に多かった。子どもに金融教育をするのであれば、高いお金を払って書籍を買ったり、塾のような所へ通ったりする必要はなく、家庭でも十分できますよ、とお伝えしているのだが、「家庭では何を教えればいいのか」ということをよく聞かれる。教えるべきことはいくつもあるのだが、今回はその中でも絶対に教えるべきことを紹介したいと思う。

リスクとリターンの考え方が基本

資産運用が中心となる大人向けの金融教育と違い、子どもに金融教育をする目的のひとつは、金銭トラブルに巻き込まれないようにすることだ。つまり、詐欺にだまされないようにすることである。最近の子どもは早くからインターネットに触れることもあり、スマホを通じて詐欺被害にあう可能性が昔よりも遥かに高まっている。

こういう詐欺にはこのように対応しましょう、とひとつずつ具体的な事例と対策を紹介していくのが最も効果的なのかもしれないが、だます側も必死なため、日々新しいスタイルの詐欺が誕生し、個別対応をしだすと、いたちごっこになることは容易に想像できる。

個別対応が難しいとなると、どんな詐欺であっても、見抜いてだまされない能力を身につけさせていくしかない。そこで重要になってくるのが、リスクとリターンの考え方である。

子どもにはリスクとリターンという言葉は難しいかもしれないが、概念をしっかりと教えてあげれば十分だ。とはいえ、最近の子どもはゲームやユーチューブを通じていろいろな言葉を覚えているため、筆者が子どものころよりも遥かに難しい言葉を早々に覚えているケースが多いので、リスクとリターンぐらいであればすでに理解している子どもも多いかもしれない。

日常生活のなかに教材は眠っている 

日常生活にはリスクとリターンの概念を教える機会が非常に多い。親が見逃さずに、機会をしっかりとものにすべきだろう。たとえば、我が家ではこんなことがあった。

ある日、自動車に乗って少し遠出をしたときのことだ。ずっと自動車に乗っていて飽きてしまった子どもは、もっとスピードを出してほしいと言い出した。たしかに、スピードを上げれば目的地まではすぐ着くだろう。しかし、スピードを上げると事故にあう確率が上がるかもしれないし、スピードを出しすぎれば警察につかまってしまうかもしれない。ただ、ルールを守って安全運転をすると、目的地までに着く時間が長くなってしまう。このような関係もリスクとリターンの概念を教えるにはいい例だ。

基本的には低リスク・低リターンから高リスク・高リターンまでのバランスのなかで物事は設定されている。安全を優先すれば到着時間は遅くなるが、早く着くことを優先してスピードを上げれば、事故にあう確率は上がってしまう。この概念さえ身に付けることができれば、まず第一歩はクリアだ。

それでは、低リスク・高リターンはないのか?この例でいえば、ドラえもんの「どこでもドア」が該当するかもしれない。あったらいいな、とは思うが、少なくとも現時点ではそんなものは存在しない。
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文=森永康平

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