ビジネス

2019.11.05

効率的な特許調査で「イノベーションの民主化」を目指す

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世界知的所有権機関(WIPO)によると、特許出願件数は毎年増加傾向で、2017年には317万件に達した。これらの特許情報を調べ、解析して自社の技術が他の知的財産権を侵害していないかをチェックし、業界の最新動向を把握するには膨大な時間と費用が必要だ。
 
人工知能(AI)と機械学習を応用し、その骨の折れる作業の効率性を高めるのが、コマル・タルワルがインドに設立したTTコンサルタンツとその子会社Xlpat Labsだ。06年、デリーの大学に通う法学部の学生だったコマルは、2歳年上の起業家の姉に憧れて起業を決意。両親に頼み込み、自宅の地下室で米国の法律事務所向けに特許調査を行うTTコンサルタンツをつくった。
 
最初の半年間は鳴かず飛ばずだったが、オンライン広告が功を奏して仕事が入るように。08年の世界金融危機後は、台湾や日本などアジア企業との取引を増やしてきた。
 
転機が訪れたのは、12年。顧客から「特許調査でもAIを使って、リサーチャーがかける時間を短縮できないか」と聞かれたのをきっかけに研究開発を開始。自分が調べたい事柄を検索すると、それに関連する世界の特許出願書類や科学論文のトップ10を選び出し、その要約レポートもつくれるヒット商品「Xlpat」が出来上がった。強みは情報の分析力で、特許の相対的な価値やマネタイズの可能性も指標化できる。
 
現在、世界で1000社以上が同社のサービスを利用しており、日本でも大手メーカーなど100社以上が顧客だ。コマルが掲げるのは「イノベーションの民主化」というビジョン。「地下室で始めた小さな会社がここまで成長できたのは、リスクを恐れず新しいイノベーションを追求してきたから。どんな人でも簡単にアイデアをイノベーションに変換できる仕組みをつくりたい」。


コマル・タルワル◎TT Consultants創業者兼ディレクター。子会社のXlpat Labsの共同創業者。2016年にイスラエル政府による優れたスタートアップへ送られる「スタートテルアビブ」賞を受賞。ビジネスリーダーとして世界経済フォーラムのダボス会議などに出席。

文=成相通子 写真=帆足宗洋

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