同社CEO・柳澤大輔氏に起業家としての心構えや、ベンチャー企業の組織づくりについてドリームインキュベータの小縣拓馬が聞いた。(全5話)
※本記事は2017年9月に実施したインタビュー内容を基に作成しております。
職能を突き詰めてやり続ける中でしか幸せは訪れない
──近年、資金調達ブームと言われるほど、昔に比べて簡単に資金調達できる状況かと思います。この状況に対してなにか感じられていることはありますか?
私は「職能」というものに興味があるんです。
冒頭で少しお話ししたように、起業家や経営者の職能が何なのかというのを突き詰めて、一生懸命やり続ける中で成長していく、というのがその人の人格成長や幸せに繋がっていくと思っています。
一方で、どうやって成長していくのかは時代によって状況が違っていて、ベンチャーの起業についても、物凄く苦しんでお金を集めなければいけないという時代ではもうないのかもしれません。
ただ、職能を突き詰めると、簡単にお金を集めることが出来ても、結局会社を大きくしていかない限り真の経営者にはなれないので、どちらにせよ困難はあります。経営者という職能には、やはり覚悟が必要だと思いますし、上手くいかない事業が一定数あるという状況は今も昔も変わらないんじゃないでしょうか。
我々は創業時からカヤックを「面白法人」と称していますが、会社を立ち上げる際にも「会社が面白いなんてけしからん」「そんな甘いもんじゃないぞ」と言われました。時代に応じて成長の方法や困難な事に違いはあれど、結局職能を突き詰めてやり続ける中でしか幸せはない、ということはいつの時代も共通だと思います。
──素朴な質問なのですが、なぜ職能に興味を持たれているのでしょうか?
何ででしょうね(笑)。
言えることは、1つのことを極め続けている人の本とかを読むと面白いんです。生き方としても面白いし気づきがあるし、「この職業を突き詰めるってどういうことか」を徹底していく先に、仕事というものの本質があるんじゃないかという気がするんです。職をくるくる変えていると、そんな境地にはたどり着かないんだろうなと思います。
たとえば、私はStartup Weekend TOKYOやカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルなどの審査員をやっていたんですが、そういう時にも「審査員になる人というのはどういう人なのか」「審査員長になれる人はどういう能力が必要なのか」を見極めていくようにしています。
どの職能が偉いとか、そういう優劣は無くて、起業家も経営者も一つの職能に過ぎません。どんな職能でも良いので、どの職能を選んでどこを突き詰めるか、ということ以外に仕事の真の意味は無いのではないのでしょうか。